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2006年11月24日 (金)

中本千晶のヅカ★ナビ!

<初級編>清く正しく?イケナイ恋の物語

レベル:★☆☆(初級)
分野:愛の倫理学
対象:最近、イケメン課長(既婚者)の顔を見るとドキドキしちゃう、困ったわ~という人

 タカラヅカというと、独身男女による清く正しい恋愛物ばかりを上演しているイメージを持たれる方も多いのかもしれない。
 だが、じつはそうではない。「道ならぬ恋」もしばしば取り上げられ、数多くの名作を生んでいる。そのひとつが、現在、花組全国ツアーで公演中の「うたかたの恋」だ(12月1日まで)。

 舞台は世紀末のウィーン、ハプスブルグ王朝最後の皇太子ルドルフ(春野寿美礼)はベルギー王室から娶った正妻ステファニー(舞城のどか)があるが、愛のない結婚生活に深く失望し、宮廷での息の詰まる毎日からも逃げるように女遊びに身をやつす日々を送っている。

 そのルドルフが初めて救いを見出したのが純真な娘マリー・ヴェッツェラ(桜乃彩音)との恋だった。道ならぬ恋の果て、行く先を失ったふたりが選択する結末は、さながら近松の心中物を彷彿とさせる。
 この作品は過去にも何度か上演されている名作なんだけど、生で観劇してみて、これぞタカラヅカの「キングオブ純愛」という実感を新たにした。

 しかし、冷静に考えるとこの恋は「不倫」?? 見目麗しい皇太子という仮面がなければ、倫理道徳的にタカラヅカの主人公としていかがなものか?といえなくもない。

 もちろん、いまどきそんなことをいう人はいない。それどころか「不倫」「いけない恋」系の名作も、じつはタカラヅカには多い。
 そのさきがけが「ベルサイユのばら」のフェルゼンとマリー・アントワネットだ。だが、この作品が初演された時代には「王妃の不倫の話をタカラヅカが取り上げるのか」という批判もあったというから驚きだ。

 先ごろ月組瀬奈じゅんが主演した「あかねさす紫の花」は、万葉時代の歌人、額田女王を巡る二人の皇子の争いだ。
 もともとは弟・大海人皇子(後の天武天皇)の妻であった額田に横恋慕した兄・中大兄皇子(後の天智天皇)が、力づくで弟の妻を奪っちゃう。額田のほうも、頭ではいけないイケナイと思いつつ、気持ちどんどん惹かれちゃう、という物語。

 この「あかねさす紫の花」には中大兄皇子を主人公にしたバージョンもある(2002年博多座)。こちらのバージョンでは、ただ強引なだけではなく、王者の孤独のなかで額田という女性を求めざるを得ない中大兄の「弱さ」の部分が魅力的に描かれ、「ま、額田が惚れるのもやむを得まい」と思わせる展開となっている。
 ちなみに、これを主演したのも春野寿美礼だった。

 ちょっと変則的な大人の恋模様を描いた名作として思い出すのは「琥珀色の雨にぬれて」だ(2002年花組)。主人公のクロードは婚約中の身でありながら、年上のマヌカン、シャロンに恋心を抱いてしまう。
 ちなみにこの作品の東京公演でも春野寿美礼が代役で主演している。

 時代の変化とともに恋愛のあり方も変わってくる。タカラヅカの舞台での恋模様も、ますます多様性を帯びたものになるんじゃないか、いや、なって欲しいと期待している。
 今回の「うたかたの恋」なんて、マリーにわが身を同化させて物想いにふけった女性も観客席には多かったんじゃないかな。

 しかしそれにしてもオサさん(春野)って「イケナイ恋」が似合うスターだよね。彼女が演じる男役には、イケナイとわかっていながらも禁断の道に走ってしまいそうな危うさ、ヤバさがある。
 宝塚の正統派男役といわれがちな春野寿美礼だけど、この点において彼女こそ今の時代を感じさせるスターだと思うんですけど、いかが?(中本千晶)

☆ステップアップのための宿題☆
我が娘を“清く正しく”育てたいお母様へ。「宝塚なら安心」と思って観劇に連れて行くと、ときどき教育上よろしくないストーリーが展開されるので気をつけましょう。もっとも、そういう刺激的な話こそ、実社会ではたいへん役に立つと思うんですけど。

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2006/11/24 10:30:00 中本千晶のヅカ★ナビ! | | トラックバック (1)

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