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2006年12月26日 (火)

榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー

沢山の夢をありがとう 『朝海ひかるサヨナラショー』

雪組東京宝塚劇場公演 千秋楽(12月24日)
「朝海ひかるサヨナラショー」

 11月17日に初日の幕を開けてから、連日満員の客席を前に熱気溢れる舞台を見せていた雪組の公演『堕天使の涙』『タランテラ!』が千秋楽を迎えた。

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 この日の舞台はいちだんと迫力満点で、これが最後の主演男役スター朝海ひかる演じる堕天使ルシファーは、妖しく強く、悩み深く美しく、また、盲目の元バレリーナ・リリスの舞風りらは、演技もダンスも清らかに澄み切って、そして水夏希演じる芸術家ジャン=ポールは、屈折と繊細を深めて、見応えのある世界を見せてくれた。

 主演陣を支える他の出演者たちも、それぞれの役にのめりこんで演じていて、その空気が客席にも伝わり、観客も水をうったように静まりかえって舞台に見入っている。それだけに堕天使ルシファーが、再び人間界から去って行くラストシーンはまさに朝海の姿と重なって、こらえきれずすすり泣く声があちこちから聞こえてきた。

 ショーは、いつ倒れるかと思われるほどのハードなダンスシーンを見せるダンサー朝海に対して、ひときわ大きな拍手が送られる。とくにフィナーレの8分間を踊りきる朝海の、すさまじいまでの迫力と気力には、いつまでも拍手が鳴りやまない。
 やがて主題歌「メメント・モリ」に送られて朝海が大階段を上っていく。入れかわりに降りてくるのは次期主演男役の水夏希。すれ違うその瞬間、の肩をポンとたたく朝海。大劇場の千秋楽にも見られたシーンだが、朝海ひかるのさりげない優しさ、水夏希への信頼感とその絆の深さを伝えて、観客の胸に迫る光景だった。

 フィナーレのあとに行われる『サヨナラショー』の用意のあいだに、飛鳥裕組長から退団者の紹介が行われる。飛鳥組長の胸にもさまざまな感慨があるのだろう、時として言葉につまりがちになる。そんな組長を励ますように拍手が送られると、「ありがとうございます。今日は心に鍵をかけています。そうでないと……」と、精一杯の笑顔で応える。

 そして用意が整った。『サヨナラショー』の内容はすでに一度書いたものと同じなのだが、簡単にまた報告しておこう。

 オープニングは『ベルサイユのばら』より「我が名はオスカル」、大階段に映し出されるオスカルのスライドを背景に、白に飾りのついたエンビ姿の朝海ひかるが浮かび上がる。

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 続いて「ROSSO」、赤い服で銀橋を踊り渡った朝海が映し出されている。続く『レ・コラージュ』の深海の場面には水夏希が歌で加わり、朝海舞風りらの優雅なデュエット。2人のダンスは『Joyful!!』、そして『ワンダーランド』へと続き、水夏希以下男役たちの「ガイ」のかっこいいダンスへ。

 朝海舞風がいったん去ると、退団する有沙美帆悠なお輝、愛耀子、花緒このみ、彩みづ希、夢華あやり、紫いつみが、銀橋に出て『タカラヅカ・グローリー』を歌う。どの顔もきらきらとしている。

 にぎやかに盛り上がったあと、一転してシルバーグレーのフロックの朝海が上手にせり上がり、『睡れる月』の「中納言と式部卿宮」をしみじみと歌う。悠なお輝が弓で場面を引き締める。

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 盆が回るとピンクのドレスの舞風が登場。『Romance de Paris』の別れの場面を歌で再現。切ないメロディが、作品世界を甦らせる。

 続いて愛耀子のソロで『銀の狼』へと場は変わり、ダークなムードのプロローグの群舞へ。そのあとは『Joyful!!』で場面が明るく盛り上がり、朝海を囲んでの全員のラインダンスまで楽しいシーンが展開される。

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(↑クリックすると大きい写真を表示)

 そして『スサノオ』の「大和よ」朝海がセリ下がると、入れ替わるように舞風のイナダヒメが登場、「泣くのはやめた」をきりっと歌い上げる。

 ラストソング「風のように」、『Romance de Paris』の白いコートの朝海ヴァンサンが花道から出てくる。ペンライトが揺れる中、しみじみとその心のように思いを歌いあげ、舞台奥へと背を向けて歩み、最後に少し振り返り、静かに降りる幕の向こうへと消えていった。 

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 再び飛鳥組長が緞帳の前に登場して、退団者の続きを紹介する。大劇場に続いて、退団する人たちのこれまでの写真がスライドショーになっているのが嬉しい。また花組に組替えになる壮一帆から「雪組で朝海さんと舞風さんを見送ることができて幸せでし
た。これからもよろしくお願いいたします」という挨拶も行われた。                          

 やがて最後の幕が開く。いよいよ退団者の挨拶である。大階段を一歩一歩降りて、途中で一礼、下まで降りてきて中央のマイクに向かい、宝塚への別れの言葉を述べていく。

 ダンスにがんばった紫いつみ。きびきびとした娘役の夢華あやり、品のある男役の彩みず希、笑顔の頑張りやと言われた花緒このみ、それぞれ短いけれどしっかりとした挨拶だ。

 愛耀子は「時間よとまれ、と思いながら今日まできました。未来とは長い時間一緒につくりあげてきました。水とは時間が短いけど、愛は時間じゃない、一足飛びの愛をもらいました」と言葉をつまらせる。

 悠なお輝は「宝塚雪組男役悠なお輝でございます」と男役としての誇りを最後まで胸に抱いて挨拶。

 有沙美帆は「雪組の皆さまとのお別れは胸が張り裂けるほどつらい」と宝塚を去る胸のうちを語る。

 いよいよ主演コンビの番になる。
 「まーちゃん」という組長の声に「はーい」と答え、舞風りらが降りてくる。花束は白と淡いピンクの薔薇、いかにも宝塚の娘役らしい花束と髪飾りだ。

 「私は今、本当に感謝の気持に、幸せな気持ちに包まれています。お芝居のセリフで、“苦しいこともいっぱいあったけど、幸せだった”、大好きな言葉でした。今まさにこの気持ちでいっぱいです。
 大好きな宝塚に入って14年間、本当に幸せで楽しい日々を過ごさせていただきました。私がこんなに穏やかで幸せな気持ちでいられますのも、幼い頃から応援してくださったファンの皆さま、公演を作るに当たってこんな私を支えてくださったスタッフの方々、先生方、そして私が今まで巡りあったすべての方々なのですけれど…、とくに雪組の皆さん、私が落ち込んでいるとき、必ず“まーちゃん、まーちゃん”と温かい声をかけてくれた可愛い下級生たち、私が道に迷っているときに高いところから見守ってくださった尊敬する上級生の方々、そして、そして私がいつもベストの状態で立てるようにと心配りをしてくれた大切な同期のかよ(ゆり香紫保)、本当に私は、この皆さまのおかげで今幸せでいられるのだなと感謝しております。
 寂しくないと言ったらウソになります。大好きで入った宝塚を退めることを自分で決めるのは本当に決意がいりました。でも本当に本当に皆さまからの温かい愛をいただいて、今感謝しても感謝しきれることはありません。いっぱい幸せでした。
 今まで本当にいたらない私でしたが、ずっとおそばで一緒に舞台を作らせていただいた朝海さんには、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。お隣りにいれて幸せでした。こんな私ではございましたが、温かく見守り、導いてくださいました皆さまに、心からの感謝をこめまして、本当に本当に、ありがとうございました」

 ゆっくりと自分の気持ちをかみしめるように語った舞風りら。その挨拶に大きな拍手が送られる。
 
 そして、「最後に朝海ひかる、コム」と呼びかける飛鳥組長。「はい」という大きな声とともに、緑の袴姿で朝海ひかるが降りてくる。

 胡蝶蘭の花束は次期主演の水夏希と花組同期生の春野寿美礼から。この日、有沙への花渡しも行っていた春野は朝海と抱き合うように頬を寄せて何かささやき、笑顔で退場する。朝海の挨拶が始まる。

 「私が今まで出会った方々、そして私を応援してくださった方々、その皆さまからたくさん愛をいただき、その愛が私の力となり、舞台をつとめることが出来ました。私1人の力では、何も出来ませんでした。その皆さまに感謝の思いでいっぱいでございます。本当に朝海ひかるを16年間支えてくださり、ありがとうございました」

 シンプルだが、その一言一言に、思いをこめた力強い言葉に、場内から割れんばかりの拍手が送られる。

 組長からの「雪組の歴史を刻んでくれた10名に、もう一度大きな拍手を」という声に大きな拍手が巻き起こり、10名は晴れ晴れとした顔で頭を下げる。

 「時よ止まれと言いたいところですが…」という組長の締めの言葉が胸に突き刺さる。別れの歌は「さよならタカラヅカ」。雪組生たちと手をつなぎながら歌う10名。たくさんの仲間を送りだす側も涙で頬がぬらしながらの惜別の歌だった。

 やまない拍手にカーテンが何度も上がる。2回目から客席はスタンディング。別れの挨拶は短かった朝海ひかるだったが、盛り上がる客席に少しずつ応えるように、途中からは「私を育ててくれた雪組の感謝しております。雪組だからこそ私はここまで来れたと思います。そしてこれからも水夏希を中心とする雪組をお見逃しなく(笑)。私も毎日とはいきませんが、名古屋まで見に行きます(笑)。来年からの雪組をお変わりなくよろしくお願いいたします。皆さま、来年の雪組、楽しみですね(笑)」。

 さらに「本日で男役とはお別れでございますが、この低い声は男役を卒業しても、なお続いていくと思います(笑)」。

 客席のかけ声にも「ありがとう」と応え、「どこで私と会うかもしれません。その時は変わりなく、お声をかけてください」と語りかける。他の出演者にも話が振られたりと、一見賑やかな別れの光景だが、しっかり者に見えた愛耀子が堰を切ったように大粒の涙を流している。その姿が胸に迫る。6度目の緞帳が降りたあとも、まだ鳴りやまない拍手に、ついには朝海ひかるが下手のカーテン前に。

 「本当に幸せでいっぱいな気持ちというのは、こういうものなんだなと実感しております。あ、真ん中まで行きましょうね(笑)。本当に16年間支えてくださった皆さまに、この今の私の気持ちをお伝えすることができればどんなにいいいか。言葉はとてもちっちゃくて、表現するには足りなくて、そんな思いを今、ここに秘めています。本当にありがとうございました、朝海ひかるは本当に幸せな男役でした。皆さまに愛されて、皆さまを愛することができて幸せ者でした」

 客席から声が飛ぶ、「コムちゃん、沢山の夢をありがとう」
「こちらこそ沢山の夢を見せていただきました。ひとりひとり、今ここからお顔を見せていただいて……、そのかたがたに今、心の中で、本当に本当にありがとうございましたと…」

 最後の瞬間には声をつまらせながら、袖に消えていった朝海ひかる。その宝塚での最後の姿は、大きく優しく、舞台と観客への溢れんばかりの愛を伝えていた。(文・榊原和子/写真提供・宝塚歌劇団)

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2006/12/26 12:46:36 榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー | | トラックバック (0)

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