エリザベートの魅力
水夏希「愛しかたにリアリティを」 宝塚歌劇雪組『エリザベート』制作発表
(《おことわり》詳細レポートに差し替えました。)
宝塚歌劇雪組『エリザベート』制作発表会(1月10日)
雪組 水夏希、白羽ゆり
オープニング、ライトがあたると、白い豪華なドレスで白羽ゆりのエリザベートが立っている。お馴染みの「エリザベート」、続いて「私だけに」のメロディが流れる。突然稲妻の音にライトが落ちて、暗がりのなか「最後のダンス」イントロが響く。ライトがついて水夏希トートが現れる。ハプスブルク王家の結婚式、エリザベートの前にトートが現れるシーンだ。黒いシルクのフロックに同じ生地のズボン。細かい金刺の縫い取りが肩から袖口に、ズボンのラインにも入っている。怯えるエリザベートに迫るように歌うトート。迫力満点の踊りもあり、影コーラスが加わる。「最後に勝つのは俺ーさー」と決めて、短い時間だが『エリザベート』の世界を、水トートと白羽エリザベートで描き出してみせた。
会場が明るくなると、記者会見になる。歌劇団の小林公一理事長、栗山道義三井住友カード株式会社代表取締役会長、作曲家シルヴェスター・リーヴァイ、演出家小池修一郎、水夏希、白羽ゆりが壇上に並んでいる。
小林「初演の雪組に始まり、今や日本のミュージカルの中に定着した『エリザベート』ですが、また今回はもう一度雪組で公演することになりました。宝塚歌劇の『エリザベート』の魅力をさらに引き出していければと思っています。
雪組主演の水夏希と白羽ゆりのコンビお披露目公演であり、新生雪組のスタートとなる『エリザベート』が、どんな舞台を見せるか、多くのお客様にご期待いただきたいと思います」
栗山「96年の初演から全組、また東宝版、ウィーン版と全て協賛させていただいている『エリザベート』ですが、今回は主演コンビのお披露目であり、公演中に700回を迎えるということもあり、たいへんおめでたいことだと思っています。
ウィーン版は迫力があると思いますが、これを女性だけでやる宝塚が、大成功をおさめたのは素晴らしいことです。
これまで5組でそれぞれの方が挑戦されて成功された。今回も颯爽と水もしたたる水夏希さんのトートと、『ベルサイユのばら』で気品溢れるマリー・アントワネットを演じた白羽ゆりさんのエリザベートが、小池マジックでまたどう変身されるか楽しみです」
リーヴァイ「10数年前に宝塚と出合い、新鮮で刺激的な経験をしました。これまで各グループの公演を観ましたが、女性が男役を演じることの魅力を知り、また日本の演劇の面白さも知りました。
この作品の日本での『エリザベート』の成功は、小池さんの演出に負うところが大きいということも申し上げておきます。今回の新しい雪組のプロダクションも、また成功をおさめることを信じています」
小池「13年前、記者発表の当時は、タカラジェンヌに変なメイクをさせないでくださいと怒られたのを思い出しました。今は、水夏希がどんなメイクで、どんな服なのか楽しみにしていただくほど浸透したことに、年月の重みを感じます。なぜここまで受け入れられるのかは、リーヴァイさんの音楽が日本人のセンチメントに合ったんでしょう。
今回はウィーン版が来日して、宝塚版とほぼ同時期に上演されることになりますが、宝塚の『エリザベート』が確立しているから、落ち着いて(来日公演を)迎えることができる。ぜひ観比べていただきたいと思います」
水「宝塚では6人目のトートですが、私は、初めて『エリザベート』に出演いたします。初演を観て、その音楽の素晴らしさ、舞台の美しさ、物語の豪華さに魅せられて、本当に大好きな作品になりました。
今回、主演お披露目公演でトートをさせていただくのは幸せなことだと思っています。私と雪組の皆が、持っている能力の範囲内で処理するのではなく、ひとりひとりが新しい自分を発掘して、良い意味で皆様の期待を裏切れるようにがんばっていこうと思っています」
白羽「このたび水夏希さんの相手役としてエリザベートをさせていただくことになった白羽ゆりです。何度も上演された名作ですから、プレッシャーがないといえばウソになりますが、この素晴らしい作品に出られることは本当に幸せなことだと思っております。私の宝塚人生をかけて、そして娘役をかけて精いっぱいがんばりたいと思います」
ここから記者からの質問が始まった。
──宝塚版の魅力を、リーヴァイさんはどんなふうに思いますか。
リーヴァイ「先ほど、水夏希さんがこういった会見の席で自信を持って振る舞われるのを観ましたが素晴らしい。ちゃんとした舞台に彼女が登場するときの素晴らしさが、目に浮かびます。
新宿コマ劇場の来日記念コンサートを観に来た水夏希さんが、“マテさんのようにはできない”と言われましたが、宝塚のトートはウィーンとは違っていていいのです。そうだ、皆さん、マテさんが今ここに見えているので、ご紹介して起きましょう(拍手)。
宝塚には長い伝統があるので、その伝統に基づいて作ることが大事で、ウィーン版とは別のイメージを喚起する舞台になっていると思います」
──小池さん、新しい演出や変更点などは。
小池「スタイルが決まっている作品ですから、とりあえず考えてはいませんが、5回の公演で証明されているように、人の心に映る『死』というものを、演じるスターがそれぞれの存在意識で問うという形で作ってきました。
今回、ミステリアスでパワフルな水夏希のトートが、どう『死』を表現するか。あでやかだけど生命力のある白羽ゆりのエリザベートが拮抗して、またどう作品が見えてくるか。それを楽しみにしてください」
──水さんと白羽さん、今の時点での役作りを。
水「『死』という人間ではない存在が、初めて人を愛することによって変化する。愛しかたにはリアリティを持たせたいけれど、そのリアルさが人間くさくならないようにと思ってます」
白羽「エリザベートは実在の人物ですから資料も残っていますし、より深く理解していきたいです。でも孤独を愛し旅を続けた彼女を、自分とはかけ離れた存在で、まだ理解できていません。これからいろいろ学んで彼女に近づけたらと思っています」
──なぜ日本で成功したか。
小池「歴史ロマン的な側面と、その中で人間の内面を同時に描く。トートは、台本にも現代のロックスターのような両性具有的であると書かれていますが、そこが宝塚の男役スターにマッチするんでしょうね。
宝塚のかつてのヒット作『虞美人』や『ベルサイユのばら』に共通する歴史ロマンの面白さ、国を滅ぼす美女や王朝の終焉、両性具有的な主人公、そういった要素も引きつける原因だと思います」
リーヴァイ「初演のときにはこんなに人気になるとは思わなかった。ウィーンの初日に一路真輝さんがきて、感動したと言ってくれました。そのことで、希望を持って日本にやってきましたが、こんなに大成功するとは。
宝塚版と東宝版は段階的成功をおさめています。でも、それはクオリティの高さを保ち続けていく努力があったから。そのたいへんさはよくわかっていますし、小池さんをはじめとする日本のかたがたの努力には学ぶところが多いです」(続いて懇親会レポートへ)
(文・榊原和子/写真・吉原朱美)
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◆宝塚歌劇雪組公演◆
三井住友VISAミュージカル『エリザベート』-愛と死の輪舞-
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ 音楽:シルヴェスター・リーヴァイ
潤色・演出:小池修一郎
期間・場所:
2007年5月4日(金)から6月18日(月) 宝塚大劇場
2007年7月6日(金)から8月12日(日) 東京宝塚劇場<予定>
主な配役:
トート…水夏希、エリザベート…白羽ゆり、フランツ・ヨーゼフ…彩吹真央、ルイジ・ルキーニ…音月桂、ルドルフ…凰稀かなめ
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《関連情報》
■彩吹、音月、凰稀らも参加 雪組『エリザベート』制作発表懇親会
■レポート―ウィーン版『エリザベート』来日記念コンサート
■《ウィーン版》ミュージカル「エリザベート」製作発表
投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/01/10 22:04:30 エリザベートの魅力 | Permalink | トラックバック (0)