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2007年1月22日 (月)

感激!観劇記

コーラスが魅力の群像劇 ミュージカル『タイタニック』

東京国際フォーラム・ホールC
『タイタニック』

 東京国際フォーラムで上演中のミュージカル『タイタニック』は、97年にブロードウェイで初演され、トニー賞5部門を受賞した大作。20世紀初頭に起きた豪華客船タイタニック号の沈没を題材に、乗組員、1~3等船客、船の設計士や船主ら多彩な登場人物それぞれに焦点を当てた群像劇です。

Titanic3

 このミュージカルの魅力は何といっても歌。主要人物だけで10数人いますが、それぞれのソロやデュエットナンバーが巧みに各人物像を描き分けています。

 さらに素晴らしいのはこうしたソロやデュエットが周囲を巻き込んで展開し、やがて大人数のコーラスとして歌い上げられていく過程です。たとえば出航のシーン、港にまず乗組員たちが、次に3等船客、2等船客、最後に1等船客が現れては乗船します。1人1人の歌はそれぞれが所属するカテゴリーごとにコーラスとなり、最後には船に乗るすべての人々の大きなハーモニーとなって、希望に満ちた船出の喜びが奏でられます(「ゴッドスピード・タイタニック」)。しかしこの旅立ちはやがて悲劇になるとわかっているためか、喜びあふれるハーモニーのはずなのに、開始早々、涙が出そうになりました。

 3等船室の場面もまた見ごたえがありました。故郷を捨て、アメリカで夢をかなえようとするケイト(紫吹淳)の歌うソロ「ケイトの夢」が、やがて同じ3等船客すべてのコーラスになる。今は貧しくていちばん安い客室しか取れないけれど、新天地で成功を夢見る彼らの同じ思いが伝わるシーンです。

 作詞・作曲はモーリー・イェストン。『グランド・ホテル』や『ナイン』、そして宝塚歌劇ファンにはおなじみの『ファントム』の音楽を手がけています。『ファントム』の、パリの街角やビストロの場面のように、舞台全体が一体となって作り出すハーモニーを思い起こしていただけると、その素晴らしさが伝わるのでは、と思います。

 物語後半は、沈みゆく船の上で生死に直面した人々のドラマが描かれます。事故の責任を押し付け、婦女子優先の救命ボートで脱出する船主、設計ミスに気づいて精神に異常をきたす設計者、妻子を救命ボートに乗せ、船に残る男たち。これらの良く知られたエピソードは、このミュージカルでは遠い歴史上の悲劇というよりも、普遍的な出来事のように感じました。それは、登場人物たち ― セレブのゴシップが気になるそこそこの家庭の中年婦人、引きこもりがちな通信士、オタクっぽい設計者、不倫の子を宿したたくましい女の子など ― が、現代もどこにでもいる人のように描かれているからではないかと思います。

 エピローグ、「いつの時代も」に続き、再び出航のシーンとなって「ゴッドスピード・タイタニック」が歌われます。このラスト・シーンは、人がスピードを追い求める限り、それが船であろうと飛行機であろうとロケットであろうと、いつの時代も同じことは繰り返されるだろうという諦念、それでも進歩せざるを得ない人間への愛のようなものを感じました。

 印象に残った主要キャストと歌を。
 タイタニックを設計したアンドリュー(松岡充)。プロローグのソロではミュージカル的な歌い方にちょっと戸惑いましたが、終盤、精神に異常をきたしてから歌う「アンドリューのビジョン」は、彼らしい感じでよかったと思います。

Titanic1

 ボイラー士バレットを演じた岡幸二郎がずば抜けた歌唱力と表現力で、最後まで目をひきつけました。シャイな通信士ブライド(鈴木綜馬)とのシーンで歌う「プロポーズ」「夜は生きている」が特に印象に残りました。

 隙あらば1等船客にお近づきになろうとする2等船客のアリス(森口博子)にはついつい共感。そんな下世話で困った妻を優しくとがめ、見守り、妻を救命ボートに乗せた後は船と共に沈んだ夫のエドガー(青山明)、格好よくはないけど理想のダンナ像です。

 紫吹淳が演じるアイルランド娘のケイト。同じ3等船客のジム・ファレル(浦井健治)に無理矢理結婚を迫るは、押し倒すは、でもそんな強引な性格はお腹に不倫の子を宿していて、不安でいっぱいだから。そんな少し不安定なケイトをキュートな外見とハスキーな声で、「らしく」演じていました。紫吹淳と浦井健治の美女美男カップルには、台詞がないシーンでもついつい見入ってしまいました。この2人は生き残ることができたのですが、後日譚を見たい気がします。

 そのほか、何も見えない真っ暗な海を見つめる見張り番の孤独と不安が伝わる「ノー・ムーン」などが心に残りました。

 オーケストラ・ピットを3等船客に見立てた立体感のある舞台セットもすばらしい。氷山との衝突はいまいち迫力不足でしたが、いよいよ沈没するときの、垂直になった甲板は見ごたえがありました。(スタッフO)

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/01/22 13:39:00 感激!観劇記 | | トラックバック (0)

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