榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー
心に沁み入る水・白羽の熱演 雪組『星影の人』
『星影の人』は、やはり傑作である。副題に「沖田総司・まぼろしの青春」とあるように、新撰組の青年剣士沖田総司と、祇園の名妓玉勇が、ある雨の日に出会い、惹かれ合い、やがて沖田の発病をきっかけに、切ないまでに互いにのめりこんでいく過程が、時代劇らしく抑制がきいたなかで描かれる。
沖田と玉勇の恋は切ない。ともに孤独に育ち、人斬り集団と色街という苛酷な現実のなかで生きる2人が、互いの存在にときめきと安らぎを覚える。だが沖田の病気により、それも束の間の輝きでしかないことを思い知らされる。誰が悪いわけでもなく、取り巻く人々は優しい、それでも2人に未来はなく、その恋に幸せな成就はないのだ。そんな悲劇的な恋物語を柴田台本は美しく描き、互いに恋心を打ち明ける建仁寺の場や、限りある命と知ったあとの逢瀬の嵐山の場は、水・白羽の熱演もあって、その一言一言が観るものの心に沁み入るのだ。
柴田侑宏の優れた作品では、出演者にきめ細かな性格づけと意味のあるセリフがうまく振りあてられる。今回も新撰組の隊士や舞妓で出ている若手たちの、ちょっとした動作や一言が場面の空気を変えたり、観客の笑いを誘ったりする。だらしない新米隊士(香音有希)、無邪気でシビアな舞妓たち(穂月はるなと早花まこ)、新撰組の大家であるご隠居(鈴鹿照)の人を食った京都人ぶり。「コンコンチキチ、コンチキチ」と宵山に続く京の暑い夏を自慢するご隠居には、どんな混乱が起きようとも、祭りや日常を侵されない“都びと”の誇りが隠されている。そんな人間描写で物語に厚みを加える作家の細工は、あちこちに散りばめられているうえ、京都の季節感と落ち着いたたたずまいが、背景を彩り、作品の奥行きを深めている。
この作品で、沖田総司を演じている水夏希は、声を高めに設定していることや、薄めの肩、細い手足などが、はかなさと結びついて、無理なく沖田として舞台に生きている。隊士であることを誇る無垢な若さ、病いを受け入れる悲愴、玉勇にだけ見せる弱さと強さ、それぞれの顔が魅力的だ。主題歌の「生きるときめき」では、沖田の揺れる心を感情を込めて歌いあげている。
玉勇の白羽ゆりは、最初の出から華やかさと美しさで圧倒する。京都弁をはんなりとしゃべりながら、芸技暮らしのつらさをのぞかせ、沖田に安らぎと生き甲斐を見つけていく過程がよく見え、うなずける。落ち着きと初々しさの両方がある人だけに、水の役次第でどちらも出していけるだろう。
土方歳三の彩吹真央は、思いがけなく大人っぽい面が前に出て、沖田の兄貴分としての貫禄と優しさを見せている、また仇と狙う芸妓とのエピソードでは男役の色気を表し、短い場面ながら物語に陰影を作っている。苦悩する沖田を歌う「星影の人」は、まさに聞き応え満点だ。
その他に、専科・汝鳥伶の近藤勇は場を締めているし、密偵山崎丞の未来優希は、硬軟両面を持つ頼もしい隊士。山南敬助の彩那音は、外見の若さで損をしているが演技は重みを出して、恋人明里の涼花リサとともにいい場面をもらっている。
桂小五郎の凰稀かなめは、沖田と絡む大きさも出て、舞台上の着替えながらのセリフも明晰、芝居が上達した。隊士の中で元気と直情を振りまき印象的なのが柊巴。そのほか新入り隊士の谷みずせ、男くささのある真波そら、この公演が退団になる白帆凛は、山南切腹でいい泣きを見せている。
娘役も役が多いのがこの作品で、医師の卵の早苗は晴華みどり、父親の横井良玄・ 飛鳥裕とともに沖田の余命を告げる場で健闘している。早苗は新撰組の可憐な女中おみよの山科愛とともに、沖田への想いを歌う場があり切ない。灯奈美の玉勇の姉芸妓染香は、おっとり優しくいながらも、ぽろっともらす美味しいセリフが多く玉勇との京舞もみごと。土方を仇と狙う加代の花帆杏奈、安紀の純矢ちとせ、幾松 の天勢いづるはそれぞれいい女で、郭の見張り人のお島・ゆり香紫保や、玉勇の女中のおゆき・愛原実花も見せ場がある。(文・榊原和子/写真・平田ともみ)
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◆雪組公演◆
ミュージカル・ロマン『星影の人』-沖田総司・まぼろしの青春-
作・演出/柴田侑宏 演出・振付/尾上菊之丞
ダンシング・レビュー『Joyfull!II』
作・演出/藤井大介
場所:中日劇場公演
期間:2007年2月2日(金)~25日(日)
詳細は ⇒宝塚歌劇団公演案内へ
投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/02/09 8:57:45 榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー | Permalink | トラックバック (0)








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