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2007年4月19日 (木)

エリザベートの魅力

《レビュー》すごみと迫力で圧倒 ウィーン来日版ミュージカル『エリザベート』

梅田芸術劇場公演
《ウィーン版》ミュージカル「エリザベート」

 ウィーン版『エリザベート』の梅田芸術劇場公演は、日本にいながらにしてオリジナル版を観られる幸せを、改めて感じる公演である。
 今回の来日公演の豪華さは、出演者はもちろんオーケストラを含めると100名という大型の引っ越し公演であること。また、本場ウィーンでもなかなか揃わないベストメンバーを揃えての舞台は、まさに、“本物”であることのすごみと迫力をまざまざと見せつけてくれた。

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 引っ越し公演ならではの大きな見どころの1つは、ダイナミックな舞台装置である。複雑に計算されたセリ機構と、舞台上手に現れるヤスリをモチーフにした大きなブリッジの登場は、梅田芸術劇場を大幅に改修したことで可能になった。

 そのほかにも、装置面ではたくさんの仕掛けがある。2台の回転ワゴン、カフェの客が乗る遊園地の電動カート、ハプスブルク家の紋章を形どった観覧車、そして登場人物たちがその上で動くチェスボードの床など、場面を象徴的に見せるためのさまざまな工夫がこらされている。この贅沢なビジュアルを楽しむだけでも、ウィーン版を観る価値がある。

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 物語は19世紀末、騒乱のオーストリア。ハプスブルク家の皇妃エリザベートは、自由闊達な少女時代を育ったにもかかわらず、皇帝に見そめられ、妃になる。だが宮廷には、皇太后ゾフィーの厳格な管理のもと、窮屈で不条理な生活が待っていた。その苦痛から逃れるため、また自己の実現に向けて、彼女は飛び出し、放浪の旅を続ける。この史実をもとに、エリザベートの内部に潜む、“死”への志向を擬人化したトートという存在が、物語をさらに深遠なものに導いていく。

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 脚本はミヒャエル・クンツェ、音楽はシルヴェスター・リーヴァイ、このコンビが1992年に生みだしたこの舞台は、今では、9カ国15年の長きに渡ってロングランし続けている。日本でも宝塚歌劇団や東宝ミュージカルで、小池修一郎氏の潤色により、新たな『エリザベート』というべき作品となって、それぞれ大ヒット、ロングラン作品となっている。

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 その基本ともいえるウィーン版を観て一番感じたことは、何よりも、物語の主役はタイトルロールにあるように、皇妃エリザベートだということである。彼女の前に現れ誘惑する“死”=トートは、彼女のなかに内在する“死”の具体化された姿でしかなく、エリザベートは、目覚めてしまった自我と時代や状況との格闘のなかで、なんども“死”の腕のなかに身を投げようと思いつつ、踏みとどまり闘い続ける、その姿が、このウィーン版では、もっとも鮮明に浮かび上がってくるのだ。

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 そして、闘いと孤独はエリザベートのものだけではないこともこの作品は伝えてくる。彼女を愛する死=トートも、夫フランツ・ヨーゼフも、また息子のルドルフも、いや皇太后ゾフィーさえも、それぞれに孤独は深く、愛を求め、夢を求め、傷つけ傷つく。その内面の叫びが、観るものの心を揺り動かすのだ。

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 そのタイトルロール、エリザベートを演じるマヤ・ハクフォートは、1994年以来この役を演じ続けているというだけに、少女時代のシシィの無邪気さから、死の直前のやや陰鬱な様子まで、場面ごとにリアリティを感じさせる。とくにACT1の終わりの、有名な肖像画と同じポーズで現れる場面の威厳と美しさは圧倒的。もちろん“至高のディーヴァ”と称えられる歌声は、豊かな感情表現とよくコントロールされた心地よさがあり、「私だけに」のソロではエリザベートの葛藤を、「私が踊るとき」や「夜のボート」などデュエットでは強さや哀しみを歌いあげる。

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 トートのマテ・カマラスは、ロック・ミュージシャンでもあるだけに、妖しさというよりは荒々しいほどの強引さが魅力で、時折見せる少年じみた眼差しもチャーミング。ハプスブルク家側や生きている人々とは別の世界にいるものの違和感と、“死”の容赦ない強さがあり、ラストシーンのエリザベートをさらっていく場面は、まさに猛々しい“死”そのもの。歌声のボリュームやシャウト感が“死”としての恐さをうまく表出している。

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 ウィーン版では、トートよりも重要なポジションとして捉えられているルイジ・ルキーニは、イタリア出身のブルーノ・グラッシーニ。表現力に富んだ声を持つ彼は、陽気な道化的な面と殺人者の狂気を持つこの役を、自在に生き生きと自分のものにしている。人なつっこい雰囲気と、客席へのアプローチの巧みさは、まさにこの舞台のナビゲート役として、力を発揮していると言っていいだろう。

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 ルドルフのルカス・ペルマンは、今年までヨーロッパで上演されていたミュージカル『ロミオとジュリエット』の主役で大ブレイクしているだけあって、甘いマスクと繊細な役作りが魅力だ。ルドルフの見せ場は2幕での15分ほどに集中しているが(1幕にも、ルドルフおよび他の役でも出演してはいる)、そのなかで見せる青年皇太子の魂の叫びは、痛ましくて胸を締めつける。透明感のある声と美しい容姿の人だけに、トートの手の中にくず折れる死の無残さもひときわ印象的。

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 エリザベートの夫、皇帝フランツ・ヨーゼフのマルクス・ポールの魅力は、誠実で温かなその雰囲気だ。どこまでもエリザベートを愛しながら、最後までその手に彼女が戻らないその哀しみが、「夜のボート」では切々と伝わってくる。オーストリア・ハンガリー帝国の頂点に立つ者の威厳も、またその生き方の厳しさも見せながら、敬愛される国王像を的確に描き出している。

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 そのほかにも、皇太后ゾフィー役のクリスタ・ヴェットシュタインの、どこか冷たく大きな存在感をはじめ、アンサンブルの1人1人にいたるまで、それぞれが高い音楽性と、緻密な演技力、さらにエンターテインメント性も持ち合わせていることに感動させられる。

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 この優れたメンバーと素晴らしい舞台構成の梅田芸術劇場メインホールでの公演は、4月30日まで公演中。
 そのあと、5月からは新宿コマ劇場で、主要メンバーによるウィーン・コンサート・バージョンが行われる。オリジナル・プロダクションのフルキャスト約40名で、ミュージカル『エリザベート』をコンサート形式で全幕上演。セット・チェンジがないかわりに、舞台上にはオーケストラが並び、本番の衣装を着たキャストが、入れかわり立ちかわり舞台に登場する。あのユニークで豪華な装置がないのは残念だが、彼らの素晴らしい歌声と、豊かなでドラマテックな表現に、東京でまた出あえると思うと楽しみである。(文・榊原和子/写真・平田ともみ)

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《ウィーン版》ミュージカル『エリザベート』

 日本初演から11年。ウィーンからオリジナルのスタッフ・キャストを揃え、初来日。大阪と東京、2つのバージョンがお楽しみいただけます。

ウィーン・オリジナルバージョン: 2007年3月28日~4月30日 大阪 梅田芸術劇場メインホール
ウィーン・コンサートバージョン: 2007年5月7日~20日 東京 新宿コマ劇場
主な出演:マヤ・ハクフォート、マテ・カマラス、ルカス・ペルマン 他
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽:シルヴェスター・リーヴァイ
※詳しくは⇒宝塚プレシャス公演情報へ

宝塚歌劇雪組『エリザベート』-愛と死の輪舞(ロンド)-

 2年ぶり6度目の宝塚上演は、雪組の新主演コンビ、水夏希と白羽ゆりの大劇場お披露目公演にあたります。

宝塚大劇場公演: 2007年5月4日~6月18日
東京宝塚劇場公演: 2007年7月6日~8月12日
主な出演:水夏希、白羽ゆり、彩吹真央、音月桂、凰稀かなめ 他
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽:シルヴェスター・リーヴァイ
潤色・演出:小池修一郎
※詳しくは⇒宝塚プレシャス公演情報へ

投稿者 宝塚プレシャススタッフ 2007/04/19 18:36:10 エリザベートの魅力 | | トラックバック (1)

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こんにちは、唐土かほるです。 昨日から大阪・梅田芸術劇場で上演がスタートしたウィーン版「エリザベート」に行ってきました。 1992年にアン・デア・ウィーン劇場で初演されて以来、大ヒットとなった超大作ミュージカルです。日本でも1996年から宝塚歌劇で上演され、2000年からは東宝でも上演されるようになり、のべ300万人以上の方がご覧になられたとのことで�... 続きを読む

受信: 2007/04/20 11:20:31