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2007年4月27日 (金)

中本千晶のヅカ★ナビ!

《上級編》羽根のないタカラヅカ

レベル:★★★(上級編)
分野:宝塚ミニシアターガイド
対象:野田秀樹、三谷幸喜、宮藤官九郎…。こういう系のお芝居が好きな人。

 宙組日本青年館公演「NEVER SLEEP」を観にいった。
 正直いうと、前の晩の寝不足のせいで頭が少々ボーッとしていた。そこにきて「NEVER SLEEP」である。
 ああ、今の私になんてピッタリなタイトル・・・NEVER SLEEP、NEVER SLEEP・・・。心に言い聞かせながら席についた。

 ところが、幕が上がり、主演の蘭寿とむが登場した瞬間に、彼女の空気がうわっと伝わってきた。暖かくって人間味溢れる「らんとむワールド」に一気に引き込まれ、それ以降は眠気の心配はなくなってしまった。
 そう! これこそ客席数2000を超える大劇場公演とは一味違う、日本青年館公演のお楽しみ。小劇場、少人数のお芝居だからこそ、主演者のキャラクターが強烈に伝わってくるのだ。

 じつは宝塚歌劇にも小劇場公演のラインナップが存在する。宝塚ではバウホール、東京では日本青年館で行われる公演だ。
 30名以下の少人数の舞台で、舞台装置もシンプル。豪華さが売りの大劇場公演と雰囲気がまったく違う。若手が主演することもしばしばあり、トップスターへの登竜門のひとつといわれている。

 今回の作品は、1920年代のニューヨーク、「ジャズ・エイジ」と呼ばれる時代のハーレムが舞台だ。演出の大野拓史の意図は「格差社会のジャズエイジを描くこと」、いかにも今風で挑戦的な感じがする。

 蘭寿とむ演じる主人公サミュエルは、「ピンカートン探偵社」(これは実在したのだそうだ)の冴えない雇われ探偵である。
 彼が、ニューヨーク裏社会の権力闘争に巻き込まれるなかで、ギャングの親玉の忘れ形見の娘(美羽あさひ)と恋に落ちてしまう。彼女を救い出そうと奔走するなかで、探偵として男として一皮向けて成長していくというストーリーである。

 ともすれば暗くハードな雰囲気になりがちな時代背景のなか、怖そうなギャングと、サミュエルのちょっと抜けた感じが絶妙にいいバランス。

 前の大劇場公演「維新回天・竜馬伝!」では可愛い可愛い陸奥陽之助クンだった七帆ひかるが、今回は一転してスラリ長身を生かしたいい男。一見冷徹だが心に正義感を秘め、土壇場のサミュエルを助ける相方マイルズに思わず注目。
 若手が大きな役で活躍し、魅力をアピールできるのも青年館公演の楽しみなのだ。

 食えない市長の萬あきら、なぜか死後に幽霊となって大活躍する一樹千尋美郷真也、いまやオトナの女役として欠かせない存在の五峰亜季と、ベテラン陣の活躍が多いのも今回の作品のうれしいところ。
 売り出し中の七帆ひかるがチョイ悪オヤジ風ダンサー萬あきら一樹千尋を両脇に従えて踊る姿など、大劇場ではなかなか観られない。要チェックのワンシーンだ。

 羽根もラインダンスも大階段もないけれど、その分、別の部分に見所満載の青年館公演。その魅力は、つぎの3つにまとめられる。

1)箱が小さいぶん形式にとらわれない冒険的な作品ができる。

2)後半にショーがなく、上演時間が長いので無理なく深いストーリー展開ができる。

3)演者にとっても演出家にとっても若手の登竜門。思わぬ才能を発見できる。

「大劇場の華やかさもいいけど、やっぱり青年館公演はいいよね」
 開演前の眠気はどこへやら、すっかりハッピー気分で帰途についたのであった。

☆ステップアップのための宿題☆
「小劇場公演」といっても、東京の日本青年館は客席数1360。チケットも意外と取りやすかったりするので、チャレンジしてみるとよいでしょう(宝塚バウホールは客席数500なのでやや激戦)。「バウ公演を観た」「青年館を観た」といえば、あなたも中級ファンの仲間入りです。(中本千晶)

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/04/27 11:00:00 中本千晶のヅカ★ナビ! | | トラックバック (0)

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