エリザベートの魅力
トートと少女マンガ ― 小池修一郎さんインタビュー(前編)
演出家の小池修一郎は、宝塚版の『エリザベート』を成功に導いた人である。1996年の雪組での初演は、ウィーンのオリジナル版のよさを殺さず、日本のそして宝塚のスタイルへと見事に変換させて、世に送りだした。その後、東宝版ではまた新しい『エリザベート』を作りだし、こちらも日本を代表するミュージカルとしてロングランされている。今年は彼の演出家生活30年という節目の年だが、昨年の『NEVER SAY GOODBYE』で読売演劇賞を受賞したり芸術選奨に褒章されるなど、演出家としての業績がさらに高く評価されている。そんな小池氏に『エリザベート』の初演時のこと、今回の上演について語ってもらった。
いよいよ開幕まで残り1カ月をきった宝塚雪組公演『エリザベート』。初演から一貫して演出を手がける小池修一郎氏が、宝塚プレシャスインタビュー「エリザベートの魅力」に登場します。前編、後編と2回に分けてお届けします。
小池修一郎
こいけ しゅういちろう。宝塚歌劇団理事・演出家。
77年、宝塚歌劇団入団。86年、雪組公演『ヴァレンチノ』で脚本・演出家としてデビュー。
主な宝塚での演出作品に『華麗なるギャツビー』(91年雪組、菊田一夫演劇賞受賞)、『PUCK』(92年月組)、 『エリザベート』(96年雪組、星組、98年宙組、02年花組、05年月組、07年雪組。98年宙組公演で読売演劇大賞優秀演出家賞受賞)、『薔薇の封印』(03年月組)、『NEVER SAY GOODBYE』(06年宙組、読売演劇大賞優秀作品、文部科学大臣賞受賞)ほか多数。
宝塚歌劇以外の作品に東宝ミュージカル『エリザベート』(00年~、毎日芸術賞受賞)、東宝ミュージカル『モーツァルト!』(02年、読売演劇大賞優秀演出家賞、菊田一夫演劇大賞受賞)。
(インタビューより)
―― 1996年の日本初演時には、92年にウィーンで初演したオリジナル版は、確かまだあまり知られてなかったですね。そのときの上演のいきさつから教えてください。
宝塚での上演は当時の担当プロデューサーの熱心な姿勢があったからなんですが、僕や一路真輝は、ウィーン版を観ていて、なかなか難しいだろうという思いもありました。かなり変更しないと成立しないだろうなと。
上演が具体的になってからは、ストーリーにおいてのトートの位置づけを変えるとか、役を増やすとか、とくに一路さんは退団公演でしたから、トートの出番をもっと増やすこととか、いろいろお願いをしました。それで最終的にOKをいただき、宝塚用の楽曲「愛と死の輪舞」を作っていただいてスタートしたわけですが、それ以来、今日にいたるまで、宝塚版として愛されているのは有り難いことです。
(中略)
―― 宝塚はトートという役で新しく男役のフィールドを広げることにもなりましたね。
話が少しずれるのですが、トートという存在と宝塚の接点には、日本文化としての“マンガ”があると思います。
外国に行くと痛感しますが、今や“マンガ”という単語はそのまま通用するんですね。“コミック”ではなく日本の“マンガ”で、“寿司”と同じように単語が一人歩きしている。そのくらい日本を代表する文化なんです。
そしてトートの役は少女マンガの主人公によく似ています。その少女マンガは、基本は手塚治虫先生で、彼が宝塚に影響を受けて「リボンの騎士」などを描き、またその影響を受けた女性作家たちの中から、池田理代子先生が『ベルサイユのばら』を描かれた。その延長にトートがあったということですね。
(中略)
―― 初演以来、トート役を演じた方たちの代表作にもなってるし、ルキーニやルドルフを演じるとその後出世していったり。作品がスターを生む力、グレードアップさせる力も大きいですね。
それはおそらく、作るプロセスで一生懸命にならざるを得ないことと、普通の公演以上に千秋楽に向かってレンジが上がっていくというか、それぞれのハマリ方が、普通の公演とは少し違うような気がします。より深く役に入っていったり習熟していったりした結果、公演が終わったときに成長している度合いが高くなるのかもしれませんね。
―― 演出家としてはここまで各組で上演が続いてくると、それぞれ演出される際の苦労があるのでは?
稽古に入る前のキャスティングの段階がいちばん苦労しますね。スタッフとも議論を重ねます。その組の構成メンバーでやっていただくわけですから。
でも主役級の人の音域がどうであっても曲は変えられないし、キャストもそこは動かせないので、なんとか演じるほうにがんばってもらうしかないわけです。
また、演出家の仕事としては、役に対するモチベーションとか解釈とかで、気持ちをどう持たせることができるか考えます。すでに何人もがやってきて、あるスタイルとか答えが見えてしまっている役を模倣に終わらせないためには、本人がいかに新しいものとして取り組み、生まれ変わらせることができるかですから、そこに至らせるのが僕の役目だと思います。
(後略)
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インタビュー前半では、初演前に元星組主演男役の紫苑ゆうさんがウィーンで『エリザベート』を観たときに言った一言や、今回の雪組キャスト ― 水夏希(トート)、白羽ゆり(エリザベート)、彩吹真央(フランツ・ヨーゼフ)、音月桂(ルキーニ)、凰稀かなめ(ルドルフ)、未来優希(ゾフィー) ― それぞれの魅力について伺いました。インタビューの全文は「宝塚プレシャス」でご覧いただけます。動画メッセージつきの後半も後日公開予定。お楽しみに!
2年ぶり6度目の宝塚上演は、雪組の新主演コンビ、水夏希と白羽ゆりの大劇場お披露目公演にあたります。
宝塚大劇場公演: 2007年5月4日~6月18日
東京宝塚劇場公演: 2007年7月6日~8月12日
主な出演:水夏希、白羽ゆり、彩吹真央、音月桂、凰稀かなめ 他
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽:シルヴェスター・リーヴァイ
潤色・演出:小池修一郎
※詳しくは⇒宝塚プレシャス公演情報へ
投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/04/11 11:33:08 エリザベートの魅力 | Permalink | トラックバック (2)
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