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2007年5月 7日 (月)

エリザベートの魅力

新しい地平をめざす 雪組『エリザベート』評(その1.全体編)

雪組宝塚大劇場公演初日(5月4日)
『エリザベート―愛と死の輪舞(ロンド)―』

 話題の『エリザベート』公演がいよいよ幕を開けた。
 おりからオリジナルのウィーン版が来日公演中とあって、否応なく比較され論評されるプレッシャーの中での初日である。また、主演の水夏希白羽ゆりのコンビのお披露目という話題性も加わり、劇場には活気が溢れている。

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 オープニング。暗くなり、静まりかえったなかに、一筋の不協和音とともにルキーニが登場して殺人者の狂気をふりまく。その彼を裁く煉獄での裁判所のシーンから幕は上がる。うごめくハプスブルクの黄昏を生きた亡霊たち、そしてルキーニの呼びかけにより黄泉の国から登場するトート閣下。何度見てもゾクゾクする始まりだ。

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 物語は、死=トートがヒロインのエリザベート(シシィ)に魅せられて、その命を助け「生きたお前に愛されたい」と望むことから始まる。この世とあの世、“愛”という不条理に絡めとられたトートと、“死”の誘惑と闘い続けていくシシィ。パラレルな2人が織りなすロンドは、ときには激しく、ときには冷ややかに踊られる。その2人が結ばれるまでの、ラブロマンスの切なさと苦しさ、そして甘さが宝塚版『エリザベート』の大きな魅力になっている。

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 今回の雪組は、初演から11年経っての再演。他の5組を一巡して6演目の『エリザベート』である。場面構成、セリフ、歌詞は、最近の宝塚版とほとんど変更がなく、見知ったシーン、聞き慣れたメロディで舞台は展開される。もともとこの組からはじまっただけに、ある種の落ち着きのようなものが漂っていて、安心して『エリザベート』の世界に浸ることができる。しかもゾフィーの未来優希をはじめとする歌唱力では定評のあるメンバーが多いことで、主演の2人が盛り立てられているのが頼もしい。

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 その主演男役の水夏希が作り出した今回のトート像は、ちょっとした衝撃だった。これまでも各組で、それぞれ個性溢れるトートが生まれたのを見てきたが、ここまでビジュアルに主張をこめたトートはなかったと思う。ヘア、メイク、マニキュア、タトゥなど、いってみれば素を極力さらさない形で、完全武装しているのだ。この武装はおそらく単純なビジュアルへのこだわりだけでなく、冥界をその身に鎧うために、またトートの内面深く降りていくために、不可欠なツールなのだろう。
 さらにその武装は身体表現にまで持ち込まれていて、冷たく誘惑的な眼差しや身体の重さをほとんど感じさせない動きなど、まさに黄泉から来た“死”ならではの妖しい気配をまとっている。と同時に、武装すればするほど、逆に隙間からこぼれ出るトートの心のざわめきや揺れは新鮮で、観ているものの心を不意打ちにする。異形の下に隠された、人間と同じ“愛への希求や畏れ”、それが水夏希がこのトート役でいちばん見せたかったものなのかもしれない。

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 そんなふうにトートが異形であればあるほど、対する人間たちが生身で血が通った存在であることで、お互いの差異が際立つことになる。だからシシィもフランツもゾフィーもルドルフも、まさに等身大そのもので、とても人間くさい。切れば赤い血が出る身体を持ち、それぞれの孤独や苦悩に打ちひしがれる普通の人間として喜び悲しむ。そういう意味では月組の瀬奈じゅんのシシィ以外に、こんな人間くさい『エリザベート』の登場人物たちはいなかったのではないだろうか。

 この方向へベクトルが向いたのは、おそらくウィーン版の来日と無縁ではないだろう。雪組メンバーは稽古中に、梅田芸術劇場で公演していたウィーン版メンバーと、交流を何度か行っている。観劇そして直接のコミュニケーションが、出演者たちの内部にオリジナル版への理解を深め、なんらかの変化や影響を受けたことは十分に想像ができる。かつて初演時に、宝塚バージョンにアレンジするために、あえて切り捨てられていた部分、リアルな感情やメッセージ性などが、思いがけない形で雪組のメンバーのなかに息づくことになったのではないだろうか。

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 その傾向は、小池修一郎の演出に意識的に取り入れられているような気がする。初演のアレンジで、宝塚的なファンタジーにするために削った部分を、“より演劇的な”アプローチで埋めていく作業が、今回の演出で行われたように見える。登場人物たちはほとんどカリカチュアされていない。あえて戯画化しているエピソードは残っているものの、初演のゾフィーや廷臣たちが見事にカリカチュアライズされていたことを思えば、なんと今回はニュートラルになったことか。それどころか、より内面的に、より複雑に、人間たちを見せようとしているのが、この雪組版の演出の大きな特徴であり、主張に見える。

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 今回の小池演出の、“より演劇的な”アプローチは、時代と観客の変化、『エリザベート』という作品自体の進化を鋭く先取りしていて、この雪組公演の成熟とともに、やがて成果もはっきりと浮かび上がってくるにちがいない。そんなふうに、作品が一歩先へ進もうとする動きに出合えたことは、観客としてもなんと幸せなことだと思う。(文・榊原和子/写真・平田ともみ)

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(⇒『エリザベート』評その2出演者編「水夏希、ビジュアルで独自のトート像」へと続きます。)

《ウィーン版》ミュージカル『エリザベート』

 日本初演から11年。ウィーンからオリジナルのスタッフ・キャストを揃え、初来日。大阪と東京、2つのバージョンがお楽しみいただけます。

ウィーン・オリジナルバージョン: 2007年3月28日~4月30日 大阪 梅田芸術劇場メインホール
ウィーン・コンサートバージョン: 2007年5月7日~20日 東京 新宿コマ劇場
主な出演:マヤ・ハクフォート、マテ・カマラス、ルカス・ペルマン 他
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽:シルヴェスター・リーヴァイ
※詳しくは⇒宝塚プレシャス公演情報へ

宝塚歌劇雪組『エリザベート』-愛と死の輪舞(ロンド)-

 2年ぶり6度目の宝塚上演は、雪組の新主演コンビ、水夏希と白羽ゆりの大劇場お披露目公演にあたります。

宝塚大劇場公演: 2007年5月4日~6月18日
東京宝塚劇場公演: 2007年7月6日~8月12日
主な出演:水夏希、白羽ゆり、彩吹真央、音月桂、凰稀かなめ 他
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽:シルヴェスター・リーヴァイ
潤色・演出:小池修一郎
※詳しくは⇒宝塚プレシャス公演情報へ

投稿者 宝塚プレシャススタッフ 2007/05/07 18:34:17 エリザベートの魅力 | | トラックバック (1)

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受信: 2007/05/08 9:13:46