感激!観劇記
踊りが紡ぐ物語 大浦みずきダンスシアターGIGEITEN『コインランドリー』
大浦みずきのダンスシアター「コインランドリー」(3/29~4/1、青山円形劇場)は、ダンスなのにストレートプレイを観たような気になる舞台だ。台詞のある演技は最初と最後に少しだけで、ほとんどが踊りで構成されているのに、ショーやレビューを観たというより、芝居を観たという印象が強く残る。
それは、大浦の「言葉と踊りが融合した舞台をやりたい」という思いと、それに共鳴した演出の鈴木裕美と振付の前田清実が戯曲を書くように作品を練り上げていった成果だと思う。ショーやパフォーマンスではない、こんなダンスもあるのよ、と新しい世界を教えてもらった気がした。
舞台は都会の片隅のコインランドリー。悩みを抱えたある女性(大浦みずき)が座っている。彼女がふと死を思ったとき、これまでの人生が彼女の頭の中をよぎる――誕生、家族、学校、友人、就職、結婚、出産と、彼女のこれまでの体験と感情が、ソロや群舞などさまざまなダンスで表現される。
ダンサーは大浦、前田、福麻むつ美の3人とアンサンブルの6人。それぞれがキャラクターとして肉付けされており(練習中にワークショップを通じてふくらませていったそうだ)、衣装や踊りにそれぞれ個性がにじみ出ているのが面白い。
音楽にはクラシックが使われていて、観客がその音楽に対して持っているステレオタイプ的なイメージ(結婚式の場面で定番の音楽を使うなど)を巧みに利用し、想像力を膨らますのを助けている。
大浦、前田、福麻の3人が踊る場面は、コミカルなシーンですら迫力がある。特によかったのは、学校のジャージ姿で(!)踊るシーン。濃紺の、胸に布の名札が貼ってあるようなダサいジャージなのに、帽子を深めにかぶった3人が、胸のファスナーをちょっと下げて踊ると、クールで渋い衣装に見えるのが不思議だった。
でも最後にはちゃんとショー要素満載のダンスもあって(冒頭の写真)、そこでは、あらためて大浦みずきら一流ダンサーたちの切れのある踊りを満喫。そして何より嬉しかったのが至近距離でこのパフォーマンスを体感できたこと。ダンサーの息遣いまで感じられるぜいたくな空間だった。
このダンスシアターは今回が第1作で、GIGEI TEN というシリーズタイトルには、「10年計画で続ける」という意が込められているという。
8月には大浦、紫吹淳、湖月わたる、朝海ひかる、風花舞、星奈優里ら、宝塚きってのダンサーといわれたOGたちの公演『DANCIN’ CRAZY』、さらには大浦自身のタンゴ公演も控えている。さまざまな形で踊りに挑戦し続ける大浦みずきの今後に期待したい。
《関連情報》
■スターNow!:ダンス、ダンス、ダンス―大浦みずきさんインタビュー後編(07/3/31)
■スターNow!:芝居をやっている、単純にその楽しさ―大浦みずきさんインタビュー(07/3/28)
投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/05/18 20:14:11 感激!観劇記 | Permalink | トラックバック (0)