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2007年5月 1日 (火)

由美子へ・取材ノート

第6章 娘役北原遥子

14  「宝塚随一の美女」と称された元タカラジェンヌ北原遥子(本名・吉田由美子)の生涯を詳細な資料と証言でつづるノンフィクション『由美子へ・取材ノート』

 第6章では、音楽学校を卒業した由美子が、宝塚の初舞台を踏んでまもなく新進娘役として注目を集めるようになるまでを描く。北原遥子という芸名を名乗り、初舞台のラインダンスでソロを務めるという晴れがましいデビューを飾った由美子は、最初は男役でのスタートだった。しかし配属された雪組で、はや2作目で準ヒロイン役に抜擢され、娘役へと転向することになる。

☆        ☆        ☆

初舞台

 宝塚の舞台に立つには、芸名を付けなくてはならない。日常から飛翔して夢の世界の住人になるためのパスポートと言ってもいいだろう。

 吉田由美子は、最初は“北原澪”という芸名をつける予定だった。名前を決めて提出するのは本科の夏休み明けである。夏のあいだ、母と娘は、姓名判断や占星術を参考にいくつかの候補を出し、また当時人気の0学占星術の山本令菜にも相談した。

 「名字の“北原”は、純白のイメージと、ちょうど少し前に退められた北原千琴さんという綺麗な娘役さんがいたこともあって、それに決めました。下の名をどうしようと迷って、雅彦の大学の研究室の講師で、作家である川上信定先生にご相談したら、“澪”という名を付けてくださったんです。そこで“北原澪”に決めて劇団に提出しました」

 だが、“澪”の字が難しすぎるとNGになってしまう。再び由美子は母に電話で相談してきた。

 「そこで思いついたのが立原正秋先生の小説です。川上先生の恩師が立原先生で、私もいつも愛読していたのですが、立原先生の作品には“ようこ”という名のヒロインが多いんです。そこから“遙子”ではどうだろうということになって」

 旧漢字の“遙子”で、北原遙子と名付けた。だが半年後、朝日新聞の記者で宝塚の取材も多かった宇佐見正のアドバイスにより、書きやすいようにと“遙子”から“遥子”に変えている。

☆        ☆    (中略)  ☆      ☆

抜擢

 (…)女役への転向の機会が彼女の上に訪れる。予想外だったのは、その時期が、思いのほか早くきたことだろう。4月に初舞台を踏んだばかりなのに半年も経たない9月のバウホール公演で、それはやって来た。

 作品は『暁のロンバルディア』、6月に星組の若手メンバーで一度上演されたものの雪組バージョンである。新進の演出家正塚晴彦のデビュー作で、物語は16世紀初頭の北イタリアが舞台、傭兵となった青年貴族の精神的成長を描く青春劇である。その作品の劇団内オーディションを由美子は男役として受けた。だが、結果は捕らわれの王女ソフィアという準ヒロイン役に抜擢されたのである。

 兆しは、8月の東京公演『彷徨のレクイエム』ですでにあったと小乙女幸は言う。

 「まだ男役の由美ちゃんは、新人公演も女役の私と組んで通行の男をやったり、踊ったり、楽しそうでしたよ。でも本公演では娘役で踊るシーンがあったんです。パーティの場面で、研1生10人だけ、なぜか新調のドレス、すごいワッカで真紅の別珍でした。そのドレスでフィナーレのラインナップも並んで挨拶したんです。そんな豪華な衣装で大階段降りるなんて、下級生ではめったにないことなんですよ。あれは由美ちゃんがいたからだと思いますし、同期のなかでは、由美ちゃんの娘役転向は、当たり前のこととして受け止めていました」

☆        ☆    (後略)  ☆      ☆

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《関連情報》
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《バックナンバー》
もうひとつの『由美子へ』―若くして逝ったある宝塚女優の記録
第1章 見果てぬ夢
第2章 誕生と家族
第3章 体操する少女
第4章 宝塚との出あい
第5章 宝塚音楽学校

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/05/01 10:22:24 由美子へ・取材ノート | | トラックバック (0)

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