榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー
轟悠 ひときわ輝く存在感 『LAVENDER MONOLOGUE』
1幕は全6景。プロローグ、春、夏、秋、冬、エピローグ、という形で構成されていて、[プロローグ]は、ラベンダーのスモークに浮かび上がる轟が歌う主題歌、「LAVENDER MONOLOGUE」とともに幕が開く。
ある青年の輝ける青春…、彼は恋や享楽に酔いしれ、美しい時を過ごしている。だが、そんな日々が時代の嵐に巻き込まれ翳りを帯びる。戦争にかり出される青年、そこでは死が日常となっている。光から影へ、希望から絶望へ、そんな時のうつろいと儚さを、さまざまな音楽によって表していく。
各場面のイメージに合わせて使われる曲のジャンルはバラバラだが、どれもドラマティック。主演の轟悠は、シャンソンからタンゴ、ジャズ、場面の色に合わせて歌い変える。
春の舞踏会で、若々しい軍服姿を見せたかと思えば、スパイシーな夏には「アムステルダム」の絶唱を聞かせ、秋の戦いの足音のなかでは、切々と反戦歌を歌う。そして冬は絶望と死のなかで嘆きを伝える。どのシーンもそれぞれが鮮烈で忘れがたいが、秋の場面の「脱走兵」の歌のあとで銃弾に倒れる兵士の姿は衝撃的。だが[エピローグ]は、再び「LAVENDER MONOLOGUE」になり、季節はめぐり命は再び輝く。12人のメンバーとともに歌いあげる轟の明るい笑顔で幕が降りる。
2幕はバラエティに富んだ4景になっている。
1景はメタリックで、ロックな[ハリケーン2000]。2景の[オリエンタル・プリンス]はエスニックに。3景はミュージカルタッチの[ステッピング・アウト]。4景の[フィナーレ]はスタンダードなレビュー風。空間の色を4色に変えながら、ショースターとしての轟悠を演出してみせる。
この2幕の音楽も、ジャンルは幅広い。ジャーマン・メタルやアラビアやスペインのディスコサウンズ、軽いフレンチ・ポップス、プロテストするカントリー、そして壮大なバラードまで、轟悠と出演者たちは歌いこなし、踊りこなしてみせる。
2幕からは振付に羽山紀代美や名倉加代子が参加(1幕は若央りさ)、まさに充実したショータイム。少しユニークな選曲やモダンな振付が、轟悠の男役としての意外な軽さから耽美な魅力まで引き出しているのが面白い。
そんな轟の周りを固めるメンバーは宙組から12人。
轟のコンサートやディナー・ショーの常連となっている音乃いづみが娘役陣のリーダーで、美しい声でソロを歌ったり、轟とのデュエットなどもあり活躍している。
男役陣のリーダーはダンサー珠洲春希だが、意外なことに女役姿でのソロがあり聞かせる。
そのほか、男役は、鳳翔大、凪七瑠海、鳳樹いち、光海舞人、天輝トニカ、娘役は、舞姫あゆみ、美影凛、藤咲えり、綾瀬あきな、天咲千華。この出演者たちが、ダンスにコーラスにたくさんの出番があり、生き生きと舞台をつとめている。また、1幕の春の舞踏会シーンでは天咲千華が轟の相手役に抜擢され、2幕では凪七瑠海がソロダンスにフィーチュアされ、それそれ印象を残す。
このコンサートのよさは、あくまでも轟悠が中心でありながら、メンバー全員が、けっしてその背景となっていないところだろう。男役は轟とともにダンディに粋にかっこよく登場し、娘役たちは可憐でアダルティで、さらには男役にまじってのアーミー姿まで披露している。そんな全員が1つ1つの歌やダンスを心から楽しんでいるのが、観客にも確かに伝わってくるのだ。
その真ん中にひときわ輝く存在感で立つ轟悠。歌手としての魅力とともに、紛れもないスターとしての大きさに、改めて圧倒された公演だった。
最後になったが、アンコールの曲はもちろん「チェ・タンゴ・チェ」。魂から絞り出すように歌う轟悠の背後に、南米の闇の暗さと土の匂いがひととき浮かび上がった。
この轟悠コンサートは、出演メンバーが雪組に変わり、11月2日から8日まで東京の日本青年館大ホールでも行われる。(文・榊原和子/写真・岸隆子)
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轟悠コンサート『LAVENDER MONOLOGUE』
構成・演出/酒井澄夫
・宝塚バウホール公演(⇒宝塚クリエイティブアーツ公演案内へ)
公演期間:2007年4月27日(金)~5月2日(水)
・日本青年館大ホール(⇒宝塚クリエイティブアーツ公演案内へ)
公演期間:2007年11月2日(金)~8日(木)
投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/05/04 8:24:20 榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー | Permalink | トラックバック (1)
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» ♪轟悠さんのコンサート もう1週間・・・ トラックバック 今夜はB’z?宝塚?それとも中島みゆき?
ハァー・・・
あの夢のような日々から早いもので1週間過ぎてしまいましたー
宝塚歌劇団専科、轟悠さんのコンサート
Lavender Monologue
轟さんが専科に入られてから
各組に特出という形での大劇場公演以外は
みんな... 続きを読む
受信: 2007/05/10 8:37:37