榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー
瀬奈じゅん、男役の色気がこぼれ出る 月組全国ツアー『ダル・レークの恋』
月組全国ツアー初日(5月22日)
『ダル・レークの恋』
月組の全国ツアーが梅田芸術劇場からスタートした。演目は1本立てのグランド・ミュージカル『ダル・レークの恋』。1959年に春日野八千代主演で上演され好評を博し、1997年にはレビュー化したものが麻路さき主演の星組で再演され、そのときも話題をよんだ名作である。

物語は、インド北部カシミール地方にある避暑地ダル湖を舞台に幕が開く。この避暑地で、貴族の娘カマラは、身分違いの騎兵大尉ラッチマンと恋に落ちる。だが、一族の名誉を守るために、カマラはラッチマンとの別れを強いられ、彼に心にもない愛想づかしを言ってしまう。突然の別れの宣告に深く傷つけられたうえ、カマラの一族から、その地方を騒がせる詐欺師ラジエンドラと決めつけられラッチマン。怒りに燃えた彼は、自分がその詐欺師だと認め、スキャンダルにしたくなければカマラとの一夜を、と取引を要求する。一族のためその取引を受けたカマラを、ラッチマンは夜のダル湖に誘い出す。

50年近く前の物語であり、インドの身分制度が前面に押し出されているため、話の成り行きにやや古さを感じる部分もあるのだが、そこから一歩踏み込んで見つめると、この作品がかなり上質な恋愛心理劇なのだということがわかる。ラッチマンとカマラは物語のなかで、“身分”というハードルにより愛を試され、互いを傷つけあってしまうのだが、実は、彼らが越えられなかったのは“恋するものの不安”であり、“相手を信じる”ことだった。そしてそれは、ある意味では、恋する者たちにとっていつでも高いハードルなのだ。
恋は人を不安にさせる。ちっぽけなプライドやコンプレックス、甘えなどが、素直な自分を隠させたり、思いをねじ曲げたりする。この物語の2人もそんなすれ違いの果てに、相手を傷つけ、自らも深く傷つく。取り引きとはいえ一夜を過ごし、幸せな朝をともに感じながらも、また離れていくことになる2人、愛しているがゆえに相手も自分も許せないラッチマンの思いが、なんとも切なく悲しい。
そんなラブロマンスが、インドのエキゾティズムを盛り込んだ演出で繰り広げられる。原作者菊田一夫の少し時代がかった言葉は美しく、潤色・演出の酒井澄夫のレビューの手腕は華やかで、リアルでありながら幻想的な夢を見させてくれる仕上がりになった。

主役のラッチマン大尉を演じているのは瀬奈じゅん。この人の魅力の1つに「悪ぶっても本当はピュア」という「育ちのよさ」のようなものがあるのだが、それがラッチマン役にうまく投影されて、たとえば一族の前で悪党呼ばわりされて居直るふてぶてしさと、カマラの真情を正面から求めるピュアな部分の両方が、無理なく伝わってくる。また、カマラに徹底的に愛を否定されたあとに見せる悲しみ、復讐へと変わる憤り、結ばれたあとにふと見せる優しさなどに、男役の色気がこぼれ出る。ターバンや軍服姿も美しく、ターバンを取った黒髪や、崩した巻きかたなど、ビジュアルでも楽しませてくれる。ここ最近の大劇場での役柄が、本来の男役瀬奈じゅんから少しブレたものが多かっただけに、このラッチマンは待望のヒット役になった。


彩乃かなみは貴族の娘カマラで、スレンダーになった姿に豪華なサリーが美しい。役柄としては、娘役というより女役の強さと大人っぽさが必要だが、本来は芯の強さを持っているだけに、すんなりと自分のものにしている。
また、この役の一番の難しさであり見せ場でもあるのが、ラッチマンへの愛想づかしの場面なのだが、誇り高い冷たさとともに、瞳に残る愛と哀れみを、抑えた情感のなかできちんと見せている。
一夜明けたあとの酒場の場で、1人の女となってラッチマンと一瞬心通わせるさまは切ない。注文をつけるとしたら、ベッドシーンでのサリーを使っての動きで、ダンスの下手な人ではないので、芝居的になりすぎているのかもしれない。美しいダンスを踊るつもりで見せてほしい。
悪党ペペルの大空祐飛は、1幕の半分以上過ぎての登場で、出てくるとすぐに捕まってしまい、場面は少ないのに、印象は強烈で濃い。フランスとインドの混血という生まれからくる派手さと、どんな状況でもシャレのめして生きるアナーキーな雰囲気が、大空祐飛のちょっと退廃的な色気によって説得力を持つ。こういう悪党もいていいと思わせるところは、うまく役にはまったといえるだろう。フィナーレのダンスでは、歌で主演コンビを盛り立てている。
この舞台にはカマラの一族の人間たちが、たくさん登場してくる。カマラが兄のように慕う従兄弟クリスナは遼河はるひ、豪華な衣装が長身によく似合って風格もある。欲をいえば、一族中で最も心優しい人物でもあるので、その部分をもっと見せてもいいかもしれない。
その妻でカマラに小姑的な意地悪さを見せるアルマは憧花ゆりの、大人の女性らしさで健闘している。一族の長でカマラの祖父チャンドラは越乃リュウ、押し出しのよさと枯れきっていない色気が魅力。その妻インディラは出雲綾で、身分を意識して生きる誇り高さと、ふと見せる人間性が迫真の演技。カマラの妹リタは城咲あい、無邪気で現代っ子という役作りだが、ペペルへののぼせぶりがもう少し強調されると裏切られた悲しみも増しそうだ。

一方、ラッチマンの側の人間たちとしては、父ハリラムの一樹千尋が2幕から登場、息子と互いに悪口を言い合いつつ信頼しているという関係がよくわかる。一樹は1幕では、貴婦人や酒場の酒場の亭主などで場を引き締めている。パリのクラブのマダムは美鳳あや、思いがけない大人の色気と貫禄で場を仕切る。ラッチマンの子分でフランス人の榎登也が、クラブの場面では目に付く。
この作品で毎回若手が抜擢される役として注目されるのが、ホテルの使用人のラジオンとビーナ。若い2人の無邪気な恋の様子は、ラッチマンとカマラの苦しい恋と対比して描かれる重要な場面。今回は明日海りおと白華れみが、初々しく演じている。
また道化的な儲け役として出てくる憲兵隊のジャスビルとパタナックは研ルイスと光月るう、しっかり笑わせてくれる。そのほかにも、支配人・運転手・ウエイターと忙しい一色瑠加、ペペルの子分の桐生園加(ダンス場面でも活躍)など、中堅から下級生まで何役も受け持って、あちこちの場面を賑わしている。
プロローグとフィナーレで見られるエキゾチックなダンスや歌、また2幕初めのナイトクラブの場面のレビューと、見せ場ももりだくさんで、「花の小舟」の主題歌の美しさも深く心に残った。(文・榊原和子/写真・平田ともみ)

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◆月組全国ツアー◆
グランドミュージカル『ダル・レークの恋』
作/菊田一夫 潤色・演出/酒井澄夫
公演期間:2007年5月22日(火)~6月18日(月)
⇒詳しい公演情報は宝塚歌劇のサイトでご確認下さい。
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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/05/25 19:30:02 榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー | Permalink | トラックバック (2)
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» ダルレークの恋 トラックバック 紅緒の食日記
ノーマークだったあさこさんにやられました(笑)
めちゃくちゃかっこ良かったです!!!
あさこさんは大人ですね〜!
大人にしか出来ない役でした(*^^*)
ターバンをとる仕草とかその後に長い髪が出てくるところとか♪
ラッチマン(*^^*)ラッチマン(*^^*)ラッチマン(*^^*)
素敵(*>v<*)
また観たいです☆...... 続きを読む
受信: 2007/05/27 22:46:49
» 月組全ツ「ダルレークの恋」 トラックバック 沙良紗的日記
最高~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ラッチマン様、私にも罰をお与えください~!!
妄想バカ女になっちゃった・・・。
あさちゃんは、やっぱり苦悩する役が本当に似合う。
ゆーひは、無表情な役が本当によく似合う。
ラッチマンとカマラのラブ... 続きを読む
受信: 2007/05/28 23:45:04







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