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2007年7月12日 (木)

榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー

春野寿美礼の魅力で見せる舞台 花組『源氏物語 あさきゆめみしII』評(その1.全体編)

花組 梅田芸術劇場 初日(7月7日)
『源氏物語 あさきゆめみしII』

 春野寿美礼の退団まであと半年、カウントダウンが始まっている。そのなかで観る『あさきゆめみしII』は、なんとも感慨が深い。
 初演の『あさきゆめみし』は7年前で、ショーと2本立てのなかの1本だった。当時のトップスター愛華みれ光源氏で、春野は今回真飛聖の役となっている“刻の霊(ときのすだま)”を演じ、妖しい魅力を振りまいていた。だがこの『あさき~II』で光源氏を演じる春野も、それ以上に妖しく美しい。そして、今この時期だからこその切なさや儚(はかな)さがあり、脚本や演出に残る問題点さえ許せてしまうほど、春野寿美礼の魅力で見せてしまう舞台となっている。

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 ストーリーは、時間を支配する精霊、刻の霊が、月の上のような宇宙空間に現れるところから始まる。彼により、美しい光源氏の、波乱に満ちた一生が語られる。

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 父・桐壺帝に愛された身分の低い母・桐壺の更衣の死により、光源氏は母の面影を追い続け、あまたの女性たちのあいだをさすらうことになる。そして、父の新しい妻・藤壺に激しい恋心を抱き、道ならぬ関係を結ぶ。やがて不義の子が生まれ、源氏は罪の意識に苛まれることに。
 だがそのあとも、満たされない思いと情熱のままに、次々に女性たちの愛を求め続け、やがて帝の妻になる朧月夜との関係がもとで、須磨に流されることになる。そこで知りあった明石の上との間に姫をもうけるが、3年後、都への帰京を許される。そこには最愛の女性・紫の上が、光源氏の帰りを待ちわびていた。だがその紫の上も、やがて女三の宮という正妻を迎える光源氏に苦しめられることになる。

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 初演では、須磨・明石の段から始まり、光源氏の壮年期からその死に至るまでが描かれていたが、脚本・演出の草野旦によると、今回は「源氏三歳から彼の死まで」を描いている。だが1幕は、生い立ち、藤壺との恋、朧月夜との火遊び、須磨・明石への流罪、都への帰京、そして藤壺の死までをデジタルに綴っていくので、かなり忙しい。また、ピンポイントになりがちなエピソードをつなぐ手段として、前後に歌や踊りを入れたり、刻の霊の解説を入れているのだが、かえって空気が変わりすぎて、時の流れや光源氏をとりまく状況を観客が把握しにくくなっている。

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 その点、2幕では骨太ないくつかのドラマが、きっちり演じられるので、物語としての求心力を取り戻す。とくに、初演にもあった明石の姫をめぐる2人の母(紫の上明石の上)の出会いや、女三の宮の降嫁により苦しむ紫の上の話、その女三の宮を略奪する柏木の事件などは、それぞれの葛藤で見せる場面でもあり、「源氏物語」ならではの心理劇的な深さと面白さを伝えてくれる。

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 また光源氏の有能な政治家としての側面が頭の中将との関係のなかに映し出されたり、紫の上光源氏の死には“あさきゆめ”を生きる“人間”の無常感が織り込まれているなど、2幕にはたしかに紫式部が書いたドラマティックな「源氏物語」の世界が広がっていた。(文・榊原和子/写真・平田ともみ)

(⇒『源氏物語 あさきゆめみしII』評その2出演者編へと続きます。)

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花組梅田芸術劇場メインホール公演
宝塚ミュージカル・ロマン『源氏物語 あさきゆめみしII』

期間:
7月7日(土)~23日(月)
場所:
梅田芸術劇場メインホール
出演:
春野寿美礼、桜乃彩音、真飛聖、壮一帆 ほか
脚本・演出:
草野旦

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/07/12 13:09:18 榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー | | トラックバック (0)

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