公演情報(宝塚歌劇)
安蘭けいがダーティ・ヒーローを演じる 星組『エル・アルコン-鷹-/レビュー・オルキス-蘭の星-』制作発表
8月の博多座公演『シークレット・ハンター/ネオ・ダンディズム!II』、9月の日生劇場公演『Kean』を控える星組の年末の大劇場公演『エル・アルコン-鷹-/レビュー・オルキス-蘭の星-』の制作発表会が、7月18日、東京都内のホテルで行われた。
『エル・アルコン-鷹-』は「エロイカより愛を込めて」等の作品で知られる少女漫画家・青池保子の「エル・アルコン-鷹-」「7つの海7つの空」の2作品を元にミュージカル化。16世紀後半のヨーロッパを舞台に、主人公ティリアン・パーシモンの野望に満ちた人生を描く海洋活劇ロマンだ。宝塚歌劇団若手演出家の齋藤吉正が脚本・演出を手がける。
艶やかな蘭の花をモチーフとしたショー『レビュー・オルキス-蘭の星-』は作・演出に草野旦、アルゼンチンを代表する振付家オスカル・アライス氏の振付で、本場のタンゴを織り込んだダンスが中心のレビューになるという。主演コンビ安蘭けい・遠野あすか、また柚希礼音らパワフルで華やかな星組にふさわしい2作品が揃った。
最初に小林光一宝塚劇団理事長、本公演が5回目の協賛となるNTT西日本の武藤弘和、同じくNTT東日本の古賀哲夫の挨拶があり、続いて青池保子が「このたび自分の作品が宝塚の作品に取り上げられ光栄に感じる。この作品は30年前、まだ20代の頃の若いエネルギーをぶつけて描いた作品。齋藤先生の若々しい感性でどのように舞台化されるか楽しみ、観客の1人としてワクワクするような舞台を期待している」と語った。
『エル・アルコン-鷹-』の音楽スタッフ寺嶋民哉は、映画『ゲド戦記』の音楽で有名。「今回2曲書かせていただいている。原作のスケール感とスタッフに創作意欲を刺激される。楽しみにしている」と話した。
次に『エル・アルコン-鷹-』の脚本・演出を手がける齋藤吉正が「宝塚ならではの華やかなコスチュームプレイ、愛と憎しみのドラマティックな作品。自分自身、子どもの頃から青池作品のファンで、この海洋活劇ロマンは安蘭けいと今の星組にマッチするのではないかと思う。博多座・日生劇場公演を終えて、この作品の稽古に入るとき、パワーアップした星組をご覧いただけると思う」と意気込みを語った。
最後に草野旦が『レビュー・オルキス-蘭の星-』について、「蘭が生育する東南アジア・南米・アフリカなどの暑い国がテーマとなる。世界三大劇場の1つアルゼンチンのコロン劇場芸術監督オスカル・アライス氏を振付に招き、タンゴナンバーを中心に見せるショーとなる」と紹介した。
続いて行われた質疑応答で、主人公ティリアンをどのような思いで描いたのかという問いに、青池は
「ティリアン・パーシモンというキャラクターは、それまで普通の少女マンガを描いていた自分にとって初めて“キャラ萌え”をした人物。惚れ込んで彼の生き様を作者自身が追及したいと思うようになった、作家として目覚め、転機となった」。
そのティリアンを安蘭けいという生身の役者が演じることについて「どれだけ美しく妖しく悪く演じてもらえるか楽しみ」と話した。
また、宝塚風のアレンジはどこまで許容できるかという質問には「齋藤先生にお任せして、観客の1人としてわかりやすく面白くワクワクできればいい」と期待を寄せた。
演出の齋藤は作品を選んだ理由、どこに魅力を感じたかと、これまでの宝塚歌劇の主人公とは異なる「悪キャラ」を安蘭けいにあてた理由について、
「ティリアンは宝塚には珍しいダーティ・ヒーローで、野望に満ちた青年。原作を読みなおしてみて、主人公の悪行・冷酷さこそティリアンの美学だと、共感と魅力を感じた。何かひとつ癖のある、華やかなだけでない、美しいコスチュームに隠された強さ、冷たさ、男としての生き様は、安蘭けいと星組だからこそ表現できるのではないかと期待する」と答えた。
草野は『レビュー・オルキス』では安蘭・星組のどんな魅力を引き出すのかという問いに
「ダンス中心、ダンスの魅力を引き出すことになると思う。安蘭は歌が上手いからそこはもったいないが(笑)」とコメント。また「蘭の星」というサブタイトルは偶然で、このタイトルを見て小林理事長が安蘭・星組での公演を決めたんじゃないでしょうかと語った。
宝塚作品の曲作りということで何か意識したことがあるかを聞かれた寺嶋は「齋藤先生の詩や、青池先生の原作の世界観に忠実に作ったつもり。余計な意識はしなかった」
「先ほどリハーサルで安蘭、遠野、柚希が自分の作った歌を歌うのを聞いていたが、3人とも表現力・存在感があり、聞いていて気持ちよかった。観客のように純粋に楽しみでワクワクした」と答えた。
振付のオスカル・アライスが今回の公演への抱負を語るビデオメッセージの後、安蘭・遠野・柚希による楽曲披露が行われた。
『レビュー・オルキス』の主題歌が3人により歌われた後、作曲者自身「聞いていて気持ちよかった」という『エル・アルコン-鷹-』のナンバー2曲が歌われた。安蘭による主題歌『エル・アルコン』と3人による『7つの海7つの空』。親しみやすく、かつ壮大なイメージを喚起させるドラマティックな曲調で、作中で歌われるのが今から楽しみだ。
歌い終えた3人はそれぞれ今回の公演への抱負を語った。
安蘭「『エル・アルコン』では宝塚の主演には珍しい悪役ティリアンを演じる。青池先生の世界観を壊すことのないよう、寺嶋先生作曲の主題歌のように美しく、そして悪の美学を追求していきたい。
『レビュー・オルキス』では初めてアルゼンチン・タンゴに挑戦する。オスカル先生の振付が今から楽しみ。
今回、NTT東日本・NTT西日本の協賛をいただき、舞台や衣装もいつも以上に豪華になるのかな、と期待している(笑)。」
遠野「『エル・アルコン』では貴族の称号を持つ女海賊ギルダを演じる。大人っぽい役で、最近はかわいらしい役やコメディーが多かったので、今回、大人の女性の魅力を出していきたい。
ショーもアルゼンチン・タンゴということで、先生についてがんばっていきたい」
柚希「お芝居の方ではレッドという青年役をさせていただく。レッドは純粋に育って、法律を真面目に学んでいたが、父を殺され、復讐を誓う。その心の動きを繊細に、思い切って演じたい。
ショーは、アルゼンチン・タンゴを、本場の先生についてどこまで学べるか楽しみにしている。」
続いて演出の草野・齋藤氏も交え、記者から再び質問が寄せられる。
ダーティ・ヒーローを演じることについて、安蘭は「以前、『龍星』(05年)という作品の主人公がアンチ・ヒーローだった。最初はなぜこのような人物が主役?と疑問に感じ、いかに魅力的に演じるか悩んだが、彼が悪に手を染めなければいけなかった理由とか、彼の心の傷を表現すれば、悪だけれど魅力的に見えるのではないかと思って演じていた。今回のティリアンも深く研究して、お客様に「悪いけど素敵」と思ってもらえれば、と思う」
また原作の登場人物に安蘭、遠野、柚希それぞれのどのような魅力を加えて演じてほしいか聞かれた齋藤は、「安蘭と遠野にはティリアンとギルダの、歌劇ではめったに見られない男女関係を演じてほしいと思っている。
遠野演じるギルダは強さと心のもろさを持った女性。宝塚を代表する演技派娘役として、細かい心のヒダの部分の表現を期待している。
柚希演じるレッドはティリアンの好敵手。柚希は成長著しいスターで、元気で明るいイメージに、今回新たな面―スタイリッシュな好青年ぶりをご覧いただけるのではと思う。
力ある星組のメンバー演じるそれぞれのキャラクターのドラマにも期待してほしい」
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星組公演『エル・アルコン-鷹-』『レビュー・オルキス-蘭の星-』は11月2日から12月15日、宝塚大劇場で、2008年1月2日から2月11日(予定)、東京宝塚劇場で行われる。詳しくは公演情報をご確認ください。
投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/07/19 23:53:00 公演情報(宝塚歌劇) | Permalink | トラックバック (0)