榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー
安蘭けい、包み込むような優しさみせる 星組博多座『シークレット・ハンター』
星組博多座公演初日(8月1日)
『シークレット・ハンター』
夏真っ盛りの博多座に、星組が乗り込んだ。
今年の春の、安蘭けい主演お披露目公演の『シークレット・ハンター』と、昨年湖月わたるの退団公演として上演したロマンチック・レビュー『ネオ・ダンディズム!II』の2本立てである。
人数は専科の汝鳥怜を加えて40名、約半分になっているが、下級生から上級生に至るまで、あちらにもこちらにも顔を出し、全員がめいっぱい活躍する楽しい公演になっている。
大劇場、東京宝塚劇場と上演を重ねてきた『シークレット・ハンター』は、「俺に盗めぬものはない」と豪語する腕利きの泥棒ダゴベール(安蘭)と、彼が誘拐することになったある国の王女ジェニファー(遠野)の、逃避行とラブロマンスを描いたコメディタッチの舞台。
今回の博多座バージョンは、フィナーレ部分がなくなったことにより、2つ新しいシーンが加わったが、基本的に大きな改訂はない。
主演の安蘭けいは、東京公演でもアドリブ満載で、ダゴベール(ダグ)役をすっかり自分のものにしていただけに、らくらくと芝居しているのがよくわかる。また、遠野を包み込むような優しさが、新場面によって増してみえる。ただ、初日段階では、いつもよりセリフの声に張りがなかったのは、暑さによる疲れか? 歌の部分は声が出ていたのでひとまず安心したが。23日間という、落ち着いて取り組める公演だから、じっくり体力を蓄えながら、大劇場や東京よりもさらにブラッシュアップした舞台を、博多の観客に見せてほしい。
その安蘭けいにとって心強いのが、相手役の遠野あすか。博多の空気にぴったりの元気で明るい個性で、のびのびとジェニファーを演じている。安蘭とデュエットで歌う場面も、ほどよく声のボリュームを抑えながら厚みを出しているところなど、キャリア十分の娘役ならではの技術だろう。この作品の、王女でありながら王女でないという微妙な立場は、作・演出の児玉明子の当て書きが成功して、親しみやすい個性が生きている。
また、この作品での見どころの1つになっている大劇場公演との役替わりがそれぞれ似合って、新しい魅力を見せている。メインの役だけでも触れておこう。
まず、セルジオの涼紫央は、黒っぽい地色がよく映えてシャープで野性的、ダグより頭脳派に見えるところが、事件の仕掛け人らしい。マックスの綺華れいは、いかにも切れ者で仕事に抜かりがなさそう。その部下のクリスは夢乃聖夏で、こちらはどこか頼りなげで綺華といいデコボココンビ風。
アナ・マリアの花愛瑞穂は、かなりハードボイルドな女刑事。ジェニファーがいなくなれば息子が王位にと企むニコラスは祐穂さとるで、品のよさと悪人ぶりのバランスがいい。
そして新たに作られたシーンも見どころだろう。
1つは今回カットされたフィナーレのロケット、カリビアンフィッシュのダンスが劇中に出てくること。逃避行の途中のダゴベールとジェニファーの船のデッキのシーン、風にあたっているジェニファーを探してダゴベールが現れるという、ちょっとロマンティックなシチュエーションのあと、カリビアンフィッシュたちが登場する。琴まりえや和涼華など、芝居のなかで大きな役がついている面々や上級生娘役も加わって、かわいい魚のコスチュームで元気よく踊り、ひときわ舞台を沸かせてくれる。
そして新場面のもう1つは、撃たれたダグが、病院で意識を取り戻すまでに見る夢。かなりシュールなダンスで、ジェニファーへの想い、父への愛、取り巻くたくさんの人々との関係などが表現されている。幼い頃から孤独だったダグの心理を切りとったような、ちょっとサイコタッチな場面になっている。
そんな変更点も含め、それぞれの心理により踏み込んで、いっそう笑いあり、涙ありのハートウォーミングなコメディとなった『シークレット・ハンター』博多座バージョンである。(文・榊原和子/写真・岩村美佳)
(⇒レビュー『ネオ・ダンディズム!II』初日レビューへ続きます。)
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◆星組 博多座公演◆
ミュージカル『シークレット・ハンター』-この世で、俺に盗めぬものはない-
作・演出/児玉明子
ロマンチック・レビュー
『ネオ・ダンディズム!II』-男の美学-
作・演出/岡田敬ニ
・公演期間:8月1日(水)~8月23日(木)(⇒宝塚歌劇団公演案内へ)
《関連情報》
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投稿者 宝塚プレシャススタッフ 2007/08/06 14:56:24 榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー | Permalink | トラックバック (2)
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