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2007年8月30日 (木)

公演情報エトセトラ

朝海ひかる「新しい蜘蛛女のかたちを作っていければ」 ミュージカル『蜘蛛女のキス』製作発表

ミュージカル版『蜘蛛女のキス』製作発表会(8月28日)

 朝海ひかるの宝塚退団後初のブロードウェイミュージカル出演となる、ミュージカル版『蜘蛛女のキス』の製作発表記者会見が、テレビ朝日本社で行われた。その模様を紹介しよう。

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 『蜘蛛女のキス』の原作は、ラテンアメリカを代表する作家マヌエル・プイグのベストセラー小説。軍事政権下の南米の刑務所を舞台に、同じ監房に入れられた対照的な男2人、映画の世界を夢み、空想に生きるホモセクシャルのモリーナと、現実の変革を目指す若き革命家ヴァレンティンの生き方と、極限状況での愛を描いている。
 '81年にはプイグ自身の手でストレートプレイとして戯曲化され、スペインで初演。日本でも'91年から再度上演されている。
 '85年には映画化され、モリーナを演じたウィリアム・ハートがアカデミー賞やカンヌ国際映画祭などで主演男優賞を受賞した。

 これらを経て生まれたミュージカル版は、テレンス・マクナリーの脚本、ジョン・カンダー&フレッド・エッブの音楽、ハロルド・プリンスの演出で、'93年にブロードウェイ初演された。モリーナが憧れる映画スターのオーロラ、そして幻想の蜘蛛女を演じたチタ・リヴェラが評判を呼び、'93年トニー賞において7部門を受賞している(最優秀作品賞、最優秀脚本賞、最優秀スコア賞、最優秀主演女優賞、最優秀男優賞、最優秀助演男優賞、最優秀衣装デザイン賞)。日本では約9年前、オリジナルのハロルド・プリンスの演出、市村正親のモリーナ、麻実れいのオーロラ/蜘蛛女で上演された。

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 今回の公演は、そのミュージカル版の9年ぶりの日本上演で、テレビ朝日開局50周年記念企画。“極限下での愛”を、新演出により上演し、現実とファンタジーを共存させる幻想的なステージを目指す。

 製作発表会には、演出・訳詞を担当する宝塚歌劇団の荻田浩一、モリーナ役のミュージカル俳優にして作曲家、シンガーの石井一孝、ヴァレンティンを演じるミュージカル界の新鋭・浦井健治、オーロラ&蜘蛛女を演じる宝塚雪組の元トップスター朝海ひかる、そしてモリーナの母役の初風諄、刑務所長役の藤本隆宏、ヴァレンティンの恋人マルタ役の朝澄けいが出席した。

 まず「宝塚の鬼才」と紹介された荻田が、演出の抱負、そしてキャストについて語った。
 「日本でオリジナルのハロルド・プリンス演出でない演出ははじめてと聞き、緊張しています。
 同性愛を扱っていますが、人間同士の細やかな心理のやりとり、結びつきを描いた作品だと思います。原作の小説、ストレートプレイ、映画を経てのミュージカルですが、ミュージカル版はアメリカ的に華やかにショーアップされています。そこに、ストレートプレイ版にある、男2人の淡々としたわびしさ、寂寥感を盛り込めたらと。

 石井さんは存在自体が南米で(笑)、独特の生命感を感じます。朝海さんのオーロラ/蜘蛛女は、チタ・リヴェラで有名ですが、朝海さんならチタとはまったく違うアプローチで演じてくれると期待しています。彼女の動きは、ぼくには蜘蛛っぽく見えるんですね。
 浦井さんは信頼している役者の一人です。こう見えて中身にしぶといところがある人で、そこがうまく出ればと思っています。藤本さんが演じる刑務所長はミュージカル版ではじめて出てくるキーパーソンで、その貫禄、存在感を発揮してくれればと。初風さんのモリーナの母もミュージカルだけの役で、きれいなナンバーがあります。朝澄さんは独特の透明感がある人。マルタの出番はほとんどが幻想シーン、回想シーンなので、ぴったりだなと」。

 続いてキャストが意気込みを語った。
 まず石井が「南米顔の石井です」と笑わせてから、「市村正親さんがモリーナを演じたミュージカル版を観て感動してから約10年。今年で俳優生活が15年たち、16年目を迎えましたが、節目の年の旅立ちにすばらしい作品に巡りあいました」とやる気満々だ。

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 朝海は黒のパンツスーツに赤いネックレス姿で、「退団後初の本格的なミュージカル出演に、どうなる? と思いながらもワクワクしてます。ブロードウェイのときから大好きなミュージカルで、不安はあるけど幸せな日々をこれから毎日過ごすことができればと。チタ・リヴェラにはかなうわけはないのですが(笑)、新しい蜘蛛女のかたちを作っていければと思っています」と初々しく語った。

 浦井にとっては「特別な想いのある好きな作品」。『エリザベート』のときに出あった、ストレートプレイ版の初演でモリーナ役を演じた村井国夫の「俳優は役に自分を投影したり、自分を消したりする存在だ」という言葉を紹介し、原作の舞台となったブエノスアイレスに行き、貧困や戦争の爪痕を見てさまざまに感じたことを役づくりに生かせたらと語る。
 「モリーナとの愛をこえた愛、極限の人間の心理を演じられたら。ヴァレンティン役は、本当に光栄です」。

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 宝塚伝説のプリマドンナ初風には、モリーナを思うソロがある。「名作に出られ、感謝しています。CDを毎日聞いていているところですが、母の子への歌の、荻田先生の歌詞がそのものズバリで、そこを深められたらと思っています」。

 藤本は「ぼくも村井さんから昨日、台本を100回読めというアドバイスをいただきました。2人をいじめていじめて、悪の中の悪を演じたいと思います」ときっぱり。

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 朝澄も黒いパンツスーツ姿。楚々とした美しさは相変わらずで「人として魅力的なマルタを演じたいです」と語った。

 質疑応答では、石井、朝海、浦井がすでにはじめている本読みに話題が集中。ストレート版も併せて読んでみて「謎が解けた思い」という朝海、「蜘蛛女の出現で、世界が果てしないところまで行く、その世界を体感していただけたら。石井モリーナを感じつつ、その世界を別次元にまで広げられる蜘蛛になれたら」と力強く宣言した。

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 最後に石井、朝海、浦井の3人がナンバー「キス・オブ・スパイダーウーマン(蜘蛛女のキス)」を披露。本来蜘蛛女がソロで歌うナンバーの特別バージョンに、会場は陶然とした。(文・渡辺美和子/写真提供・宝塚クリエイティブアーツ)

     ★     ★     ★

ミュージカル『蜘蛛女のキス』

《東京公演》
期間:2007年11月2日(金)~11日(日)
場所:東京芸術劇場 中ホール(⇒劇場のHP

《大阪公演》
期間:2007年11月16日(金)~18日(日)
場所:梅田芸術劇場 メインホール(⇒劇場のHP

出演:石井一孝、朝海ひかる、浦井健治、初風諄、藤本隆宏、朝澄けい ほか
原作:マヌエル・プイグ
脚本:テレンス・マクナリー
作詞・作曲:ジョン・カンダー&フレッド・エッブ
演出・訳詞・上演台本:荻田浩一

お問い合わせ:宝塚クリエイティブアーツ 0797-83-6000(10:00~17:00 水休)

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/08/30 21:14:13 公演情報エトセトラ | | トラックバック (1)

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