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2007年9月19日 (水)

榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー

水夏希ならではの沖田像 雪組全国ツアー『星影の人』

宝塚雪組全国ツアー初日(9/15)
『星影の人』

 雪組全国ツアーが、梅田芸術劇場メインホールからスタートした。
 2月の中日劇場で、『星影の人』『Joyful!!II』でプレお披露目をした水夏希にとっては半年ぶりの再演で、 『エリザベート』公演という大作をともに乗り越え、息の合ったコンビぶりを見せている相手役の白羽ゆり、またこのツアーで二番手役をつとめる音月桂とともに、35名の全国ツアーメンバー(雪組+専科の汝鳥伶)の中心となって、大阪の残暑に負けないくらい、熱さいっぱいの舞台を見せてくれた。

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 『星影の人』は、叙情性豊かな名作である。新撰組の天才的な剣士沖田総司が、祇園の名妓玉勇と偶然出会い、恋を知る。だが、胸の病という残酷な現実を突き付けられ、残る日々とその命を、恋と剣に燃やしていく様子が、柴田侑宏ならではの美しいセリフと京の四季の彩りのなかで繰り広げられる。

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 主演の水夏希は、中日公演で青年剣士沖田総司に取り組み、爽やかさと若々しさを見せてくれたが、今回はさらに彼の内面を表す演技に踏み込んで、前回より孤独と芯の強さを感じさせている。それは声の高低でいえば、前回は一貫してやや高めに作っていたが、今回はほんの少し下げて高めの地声で発声している。声を作らないということは、心情が託しやすいということでもあって、玉勇とのやりとりなどで見せる総司の本音はより切なく伝わり、その思いが観客の胸を打つ。また甘さを抑え気味のメイクは、戦いを日常とする青年の削ぎ落とされた鋭さや、すでに病に罹っている沖田を感じさせる。
 演技的には新撰組の仲間、玉勇、敵である桂などに見せるそれぞれの顔の違いで、戦いと恋、生と死のはざまで揺れる姿を描き出し、水夏希ならではの“人間沖田”像を確立したと言っていいだろう。

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 玉勇の白羽ゆりは、世慣れた大人の女の柔らかさが、落ち着いた物言いやはんなりした物腰ににじみ出て、祇園の名妓らしい格が身についてきた。その名妓が沖田を知って、まるで少女のように恋心を燃やす。それが自然な演技のなかによく表れているだけに、嵐山の場で覚悟を決めた沖田を前にした心の乱れが、いちだんと哀切さを増した。白羽ゆりという人の持つ優しげな情感とほどよい色気は、この芝居が女性主導型の恋でありながらも、観るものに抵抗感を抱かせないという点で、とくに大きな武器になっていたと思う。

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 新撰組副長・土方歳三を演じる音月桂は、持ち味の甘さと若さをどう殺して演じるかが注目されていたが、苦労のあとがうかがえる役作りで、人斬り集団を束ねる貫禄とある種の冷酷さをうまく出している。だが、やや重厚さを意識しすぎるせいか、時代がかったセリフ回しが、柴田作品ならではのリアルで平明な言葉を重くしてしまっている。とくに沖田への兄貴分としての慈しみや、自分を狙う加代への男としての揺らぎなどは、副長土方の内面にある本心として、もう少しだけ言葉にのぞかせたほうがいいだろう。そのことで土方の人間像がさらに大きくなれるはずだから。

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 役代わりの大きな役はもう1人、桂小五郎の柊巴だが、きりりとした顔だちと誠実さが役に似合っている。あとは、修羅場をくぐり抜けてきた大物らしい落ち着きと度胸をお腹に落とし込めば、さらに桂の魅力が増すだろう。

 新撰組隊士の井上源三郎を演じる沙央くらまは、建仁寺の沖田をからかう場や、山南敬助切腹のシーンなどで、めりはりの効いたセリフが印象に残るが、目立つ役どころだけに着物姿の背がきれいに伸びていないのが気になる。そのほか、高木剛の大胡せしる、永倉新八の奏乃はると、藤堂平助の伊咲真音、斉藤一の紫友みれいなどの新加入メンバーが、それぞれ個性的で賑やかさを加えている。

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 新撰組屯所の大家であるご隠居役は、灯奈美が当たり役の芸妓染香とかけもちで演じていて、出番は1場面に減ったが京都人らしいイヤミはきちんと捨てゼリフで押さえた。娘役の新メンバーの麻樹ゆめみ舞咲りんは芸妓市哉と福富であでやかさを添えているが、ベテランたちにセリフが少ないのが残念だ。玉勇の女中のおゆきは千風カレンが演じ、まだ祇園の水に馴れていないような素朴さを出している。

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 中日公演と同じ役のメンバーたちは、それぞれ成長のあとを見せている。山南敬助の彩那音は、外見の華奢さをカバーする貫禄が加わり、恋人明里の涼花リサとともに切腹の場面では泣かせる。専科の汝鳥伶が今回も近藤勇で参加、医師横井良玄の飛鳥裕とともに場を締め、密偵山崎丞の未来優希は、いちだんとフットワークのよさを感じさせ頼もしい隊士ぶり。新入りでへなちょこの谷みずせ、男っぽい色気の真波そらも活躍、また桜寿ひらり涼瀬みうと透真かずき詩風翠らは隊士と勤皇派浪士とかけもちで奮闘している。

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 娘役はほとんどが前回と同じ役で、それぞれ当たり役が多かっただけに、安心して見ていられる。医師の卵で沖田の余命を告げる場が印象的な早苗は晴華みどり、屯所の可憐な女中おみよは山科愛で、2人が沖田への想いを歌う場面は涙を誘う。許婚を土方に殺された加代の花帆杏奈は儚く、兄の敵と土方を狙う安紀の純矢ちとせはきりりと、桂の恋人幾松の天勢いづるはいい伴侶ぶりで、それぞれ芸妓姿にも磨きがかり美しい。郭の見張り人のお島のゆり香紫保にはセリフが増えた。そして前回、ほのぼのとした笑いをとっていた穂月はるな早花まこの舞妓は、今回も健在で、沖田と玉勇にしっかり茶々をいれているのが楽しい。

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 作品全体でいうなら一部のセリフに変化や割愛があるのは、全国ツアー仕様としてしかたないことかもしれないが、沖田が嵐山で玉勇に言う「あなたといると優しくなれる」が「優しくなれました」と現在進行形から過去形に変わったのは釈然としないものがある。沖田の命は、まだ燃え続けているのだから。(文・榊原和子/写真・岸隆子)

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(⇒レビュー『Joyful!!II』初日レビューへ続きます。)

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ミュージカル・ロマン
『星影の人』-沖田総司・まぼろしの青春-

作・演出/柴田侑宏
演出・振付/尾上菊之丞

公演期間:2007年9月15日(土)~10月13日(土)

⇒詳しい公演情報は宝塚歌劇のサイトでご確認下さい。

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投稿者 宝塚プレシャススタッフ 2007/09/19 16:27:53 榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー | | トラックバック (0)

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