榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー
参加して楽しもう! 雪組全国ツアー『Joyful!!II』
宝塚雪組全国ツアー初日(9/15)
『Joyful!!II』
(⇒初日レビュー『星影の人』から続く。)
藤井大介の作・演出のショー『Joyful!!II』は、観れば観るほど優れたショーだと思う。「楽器」をモチーフに場面ごとに色を変えていくとともに、観客が心理的にも具体的にも(手拍子で)参加できる場面がたくさん用意されていて、会場全体を巻き込むエネルギーに溢れている。
中日公演より装置はシンプルになっているが、そのぶん舞台上が広くなり、そこで歌い踊りまくる出演者たちの汗が飛び散る。とくに主演の水夏希は、流れる汗をそのままに各場面ほとんど出ずっぱりの大活躍。男役らしいキレとしなやかさのあるダンスはいちだんと魅力を増し、半年のあいだに身につけた堂々とした存在感で、ショーを引っぱっている。
白羽ゆりはさらに細くなったが華やかさはかえって増して、水とのゴージャスなコンビぶりを見せてくれる。デュエットダンスやリフトなどの難易度の高いダンスも、水に安心して身をゆだねているのがよくわかり、コンビというものが時間を積み重ねてゆく良さを感じさせてくれる。
ツアー二番手の音月桂は、安定したダンス・歌の力を存分に発揮、まかされたどのシーンも楽しそうにつとめている。水とからむブラックプリンスでは男役同士のダンスで色っぽいところを見せている。
各シーンは前回と大きく変わったところもあるので、具体的に書いていこう。
オープニング、第一章は、いきなり舞台上に全員が居並んでいて、ニュー・コンダクターの水夏希が指揮棒を持って登場、全員でのアカペラから、音月桂のソロで水と白羽のデュエットダンス、また後半には水を先頭に全員の客席降りもあって盛り上がる。
第二楽章「クレッシェンド・オン・ピアノ」は、カップルの男で沙央くらまが晴華みどりと組み、また水が歌い踊っていた[シェイク]を音月が受け持った。ピンクタキシードの音月は華やか。途中で階段上から音神たち(奏乃はると・早花まこ・純矢ちとせ・詩風翠)と登場する水と白羽は、デュエットダンスで2つの大技を見せ、観客の喝采をあびる。
第三楽章は、幕前から続く未来優希のイントロで、スペシャルフィンガーの水がベースとともに登場。目深にかぶったソフト帽も粋に晴華の歌手とからみ、また柊巴・谷みずせ・真波そら・大胡せしるら男役たちとダンディに、娘役のゆり香紫保、天勢いづる、舞咲りん、花帆杏奈とのセクシーなダンスを踊る。
第四楽章は「狂乱のサバテアート」、白いスパニッシュのドレスの白羽が上手から、下手からはギターの歌手の未来と音神たちが現れ、やがて音月・柊・天勢・沙央・彩那・白羽と歌い継いでいく。そして水が真っ赤なスーツで血の化身として登場、妖しく音月ら男役たちを誘惑していく。地の化身は、さらに紫のシャツに装いを変えて表れるが、このシーンの水のソロダンスはしなやかでありながら力強く、圧巻。
第五楽章は、中日公演で評判となった「コンガ」で、黒タキシードの音月・彩那・柊・谷・真波・沙央・大胡がカーテン前でかっこよく歌う。幕が開くとそこは妖しいクラブ、美しいブラックビーナスの白羽が旅人の水を誘惑し、やがて2人は恋に落ちる。だがブラックプリンスに引き裂かれ旅人は取り残される。その頭上に、静かにミラーボールが降りてきて、旅人を歓喜の世界へと誘っていく。
第六楽章は「トランペット」。旅人の耳に「ジョイフル ジョイフル」のコーラスが響きわたり、音楽の精霊たちが現れる。やがてマエストーソに変身した水が下手から華やかに登場。そこから始まる全員のラインダンスが楽しい。
第七楽章は「パーカッション」、全員のゴスペルから音月のソロになり、水・白羽のアダルトなデュエットダンスが繰り広げられる。水が肩の上で白羽をリフト、最後に優雅にポーズを決める2人に盛大な拍手が送られる。
第八楽章は「フィナーレ」。白い羽根を背負った音月と白羽、そして中日と同じ黒い模様入り大きな白い羽根の水夏希が降りてくる。会場の手拍子に盛り上がるパレード、その賑やかさのなかでフィナーレの幕が降りる。
水夏希・白羽ゆり・音月桂の全国ツアートリオは華やかさが溢れているし、新加入の麻樹ゆめみ、舞咲りん、奏乃はるとをはじめとする9名のメンバーも、中日劇場から引き続き出演のメンバーも、さまざまな「音」の世界で生き生きと歌い踊りまくる。客席降りも2回あって、ますます楽しめるものになった『Joyful!!II』。秋深い北海道まで、行く先々をそのエネルギーに巻き込んでいきそうである。(文・榊原和子/写真・岸隆子)
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ミュージカル・ロマン
『星影の人』-沖田総司・まぼろしの青春-
作・演出/柴田侑宏
演出・振付/尾上菊之丞
公演期間:2007年9月15日(土)~10月13日(土)
⇒詳しい公演情報は宝塚歌劇のサイトでご確認下さい。
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投稿者 宝塚プレシャススタッフ 2007/09/19 16:39:26 榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー | Permalink | トラックバック (0)