現役&OGタカラジェンヌの情報、舞台評、動画つきインタビューなど宝塚歌劇関連の話題をお届け。 ⇒詳しく
オスカルやアンドレが3頭身に!ブログ「ベルばらKidsぷらざ」では、Kids最新情報のほか、読んで楽しい連載が満載です。会員サイトでは「ベルばら」の魅力を宝塚歴代スターに聞く動画つきインタビューも!

« OSKのことを教えてください♪おたより | トップページ | 月影瞳さん(後編) ― 美空ひばりからラ・マンチャまで »

2007年9月14日 (金)

中本千晶のヅカ★ナビ!

《中級編》宝塚スター、前人未到の地を行く

レベル:★★☆(中級編)
分野:第二の人生を考える
対象:人生のベテランの意地を見せたい団塊の世代。

いま、日比谷の日生劇場で上演中のミュージカル「KEAN」は、タカラヅカのなかでも異色の作品だ。

何が異色かって、

1)宝塚名物のフィナーレがない!
2)恋愛がストーリーの主軸ではない。
3)主演男役が専科のベテラン。

という3つの点において、いつものタカラヅカと相当違うのである。

主人公は19世紀のはじめのロンドンで活躍したシェークスピア役者キーン(38歳)。「ハムレット」や「オセロ」など、おなじみのシェークスピア作品が劇中劇で出てくる。

この作品、キーンが45歳の若さで亡くなった3年後にアレクサンドル・デュマが戯曲化、さらにサルトルも潤色、そして1961年にブロードウェイでミュージカル化されたという経歴。原作の副題には「或いは狂気と天才」とつけられていたそうだけど、このキーンという役者さん、酒と女に溺れ、しかも借金に追われながら、なおかつロンドンっ子の人気を博するという、まさに才能と狂気が同居する役者さんだったらしい。

この「役者バカ」キーンを演じるのが、専科の轟悠。彼女の経歴もちょっと異色で、2002年2月まで雪組のトップスターだった。普通なら、トップスターはサヨナラ公演で退団するのだが、彼女は専科に移動して劇団に残ったのだ。

ちなみに専科というのは花・月・雪・星・宙の5組のいずれにも属さないベテラン集団だ。専科のメンバーは持ち前の芸を生かして各組の公演に出演し、重要な脇役を務めることが多い。

天才と狂気の混在する難役キーンは、今の轟悠だからできたんだと思う。
素顔のだらしないキーンと、舞台に立つ役者キーンの演じわけのメリハリ。そして、一幕のラストで演じ続けざるを得ない宿命を負った者の孤独をさらけ出していく、その集中力は見事だった。

当然キーンは女性にもモテる。だが、いつものタカラヅカと違って「恋」はこのお話の主軸ではない。キーンと恋のさや当てを楽しむ公爵夫人(南海まり)と、キーンの大ファンで弟子入りまで希望してしまう中流階級の娘(蒼乃夕妃)の2人が絡むけれど、本当のことをいうと、キーンはどちらの女性も愛してはいなかったのだと思う。
それにしても轟さんって、女性に縁の薄い孤高の男がホントに似合うなあ

この時期、この役の轟悠を観られて幸せだと思った。
同様に、やんちゃなプリンスを演じる柚希礼音や、体当たり芝居の蒼乃夕妃などの若手もそう。役者さんには、その時期でないと絶対出せない味があるのだ。

幕開き前には「フィナーレがない」「ダンス巧者の柚希礼音もまったく踊らないと聞いてびっくりしたが、幕が降りるときには不満も不安もすっかりかき消されていた。

宝塚バウホールでは「専科エンカレッジコンサート」が行われて、好評だったと聞く。ベテラン陣の活躍の場が多様化するのは素敵なことだ。
ことに、トップスターの役割を終えた後に劇団に残った例はこれまでほとんどないから、轟悠には、前人未踏の道を果敢に切り開いていってもらいたい。

ラストシーン、ドルリー・レーン劇場にひとり立つ役者キーンが、日生劇場にひとり立つ役者轟悠とダブってみえて、なんだか不思議な気分だった。(中本千晶

☆ステップアップのための宿題☆
通常の大劇場公演では、1公演にたいてい1~3人程度の専科生が出演しています。シブい年配の重要な脇役を務めるのはたいてい専科の人。彼女たちの円熟した芝居が楽しみになってきたら、ヅカファンとしても中級以上です。

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/09/14 11:00:00 中本千晶のヅカ★ナビ! | | トラックバック (0)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 《中級編》宝塚スター、前人未到の地を行く: