中本千晶のヅカ★ナビ!
《中級編》宝塚も昭和ブーム?
レベル:★★☆(中級編)
分野:レトロの美学
対象:秋も深まる中、「昭和」の声がちょっぴり懐かしいアナタ
「宝塚は新作主義、一度上演した作品は原則として再演しない」
・・・と、拙著「宝塚読本」には書きました。
ところが、その再演物がここのところやけに増えている。
「エリザベート」 は別格としても、雪組「星影の人」や宙組の「バレンシアの熱い花」などは、昔、一度上演されたっきりで、再演を熱望するファンの声がようやく叶ったというものだ。懐かしさのあまり、久しぶりに劇場に足を運んだ往年のファンも多いんじゃないかな。
その「バレンシアの熱い花」を観に行った(ラモン=蘭寿とむ、ロドリーゴ=北翔海莉バージョン)。
私が初めて宝塚を観た、ちょうど1年前に上演されたこの作品。その噂は、子どもながらにして気になっていた。
当時の月組は、「ベルばら」の初代オスカルで一世を風靡したトップスター榛名由梨の両脇を、瀬戸内美八と順みつきがダブル二番手のような形で支えていた。娘役陣もこれに対応するかのように、トップの小松美保に続き、オトナの女の魅力の舞小雪、純情可憐な雰囲気の北原千琴、と対照的な個性を持った娘役が控えていた。
つまり、公演プログラムを開くと、トップスター、娘役トップ、二番手スターのみに許される「1ページにひとり」の巨大顔写真がどどどんどん、といきなり6枚続きで載っているような具合。今思い出しても、当時の月組メンバーというのは超豪華だった。
その迫力の布陣にあて書きされたのが「バレンシアの熱い花」だ。
情熱の国スペインを舞台に、三人三様のバックグラウンドと個性を持った男と、これまた三人三様の魅力を持った女の恋模様が描かれるこのドラマは、当時の月組メンバーならではのものだったのだ。
私にしてみれば、「なんで1年前から宝塚のこと知らなかったんだろう。ああ観たかったなあ~」 と子ども心に悔しく思っていた作品を、30年経った今、念願かなってようやく観ることができた、というわけ(今ならDVD購入で即効解決だが)。
いくら昔の名作とはいえ、それを今の時代にあわせて復活させるのは意外と難しい。
今の感覚でみると、「お約束」めいたあだ討ちの展開や、貞節を守り抜くシルヴィア(美羽あさひ)の最期などは、古臭い感じは否めない。
そのいっぽうで、再演バージョンならではの「新しさ」を感じさせたのが、新トップ娘役の陽月華演じるイサベラだ。
身分違いの恋に身を焦がし、最後は自ら身を引く決断をするという役で、普通に演じたら一昔前の女の人のように見えてしまったかもしれない。でも、陽月イサベラが描いたのは、恋の始まりも引き際も自分で決める「自立した女」だった。小顔で現代的な容貌とスタイルを持つ彼女ならではの見せ方だった。
まあ難しいことは考えずとも、「黒い天使」の衣装を身に着け、剣を片手に並び立つフェルナンド(大和悠河)、ロドリーゴ(北翔海莉)、ラモン(蘭寿とむ)のさっそうとした姿を観ると素直に「おお~カッコいい!」 と感動してしまう。
「愛している♪」 連呼しまくりのクサい主題歌だって「おお~いい歌だぜ!」 と思わず心に染み入ってしまう。
これでもか、これでもか~といわんばかりに繰り出される「古き良きタカラヅカ」の魅力をお腹一杯味わって大いに満足したのだった。
「それにしても、ラモンはいつの間に『黒い天使』の衣装一式を手に入れたんだろう?」
・・・などという野暮な疑問はさて置き、深く考えずに楽しむのが「古き良きタカラヅカ」を楽しむコツなのかもしれない。(中本千晶)
☆ステップアップのための宿題☆
雪組で再演された「星影の人」の初演も「バレンシアの熱い花」と同じ1976年。「第一次ベルばらブーム」が終わったばかりのころでした。もう30年以上も前のことなんですね!
投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2007/10/12 11:00:00 中本千晶のヅカ★ナビ! | Permalink | トラックバック (1)
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受信: 2007/10/20 19:35:16