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2007年10月22日 (月)

榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー

スターの競演で綴る"曽我兄弟の仇討" 『宝塚舞踊会』

阪急創立100周年記念 第48回『宝塚舞踊会』(10月19日)

 今年は阪急創立100周年記念 ということで、「百」にちなんだ演目を考えたという構成の植田紳爾。「百日曽我」という言葉が江戸歌舞伎の世界にあったことを引いて、「必ず大当たりする“曽我もの”」をストーリーにすえた。この試みは大成功で、曽我兄弟の仇討ちの物語にまつわるさまざまな狂言をアレンジ、新作も加えての舞踊劇風の流れは、大きなドラマのうねりと同時に1幕劇の面白さも備えていて、見応えのある舞踊会になった。また沢山のスターたちの曽我十郎・曽我五郎が楽しめたのも収穫だった。

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 演目の中身は大きく分けると、曽我兄弟の討ち入りをストーリーで描く『蝶千鳥百日曽我』春日野八千代が踊る『振袖菊』、黒紋付きに緑の袴の『フィナーレ』という形になっている。

 曽我兄弟の物語『蝶千鳥百日曽我』は、10場からなる。

第一場「百壽三番叟」

 祝典舞踊で、星組遠野あすか宙組陽月華花組桜乃彩音という3人の主演娘役によって、松を背におっとりと踊られる。薄紫、薄緑、薄桃色という衣装も美しく、まさに華の競演。清元の「四季三葉草」をもとに新しく振付けされた。

第二場「対面花春駒 上」
 植田紳爾の新作場面で、曽我十郎に蘭寿とむ、五郎に北翔海莉が扮し、芝居ゼリフも入っての仇討ち物語の発端となる舞踊劇。和事の十郎を蘭寿が、荒事の五郎を北翔がそれぞれ演じているのが新鮮。家来にあたる金棒曵右源太と左源太を天霧真世鶴美舞夕が踊っている。
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第三場「対面花春駒 下」
 
同名の長唄をアレンジ、前の場に続いて十郎を蘭寿とむ、五郎を北翔海莉が演じている。春駒踊りの騒ぎに紛れて、父の敵である工藤左衛門祐経・箙かおるに近づくという場面で、三者の緊張感溢れる“対面”の踊りが印象に残る。周囲を賑わす春駒の男に鳳翔大如月蓮光海舞人朝都舞咲真たかね、春駒の女に南帆サリ綾音らいら白妙なつ美影凛という娘役たちが、それぞれ踊っている。

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第四場「草摺引」
 江戸狂言から取ったもので、兄の危難を救おうと鎧を片手に走り出す五郎・悠未ひろと、それを時期尚早と止める舞鶴・万里柚美の駆け引きが、ややユーモラスな動きも交えて演じられる。昨年に続いて大きな踊りを見せている悠未が頼もしい。

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第五場「廓の十郎」
 植田紳爾の新作で、大和悠河扮する曽我十郎が白酒売りに姿を変えて恋人に会いに行く一場を、セリフ入りでしみじみと見せてくれる。地唄舞のはんなりとした動きと浅葱色の着物姿が大和悠河の優しい風情を際立たせて、叙情味溢れる和事の世界となった。

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第六場「雨の五郎」
 荒事系の多い曽我五郎の狂言のなかでも有名なのがこの演目で、「廓通いの五郎」とも呼ばれる。柳の木の背景にせりあがりで柚希礼音が登場、化粧坂の少将に会いに行く姿を、勇壮に、どこか色香を漂わせながら踊ってみせた。

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第七場「小袖曽我」
 曽我十郎に壮一帆が、曽我五郎には愛音羽麗が扮して、仇討ち決行を心に秘めて、母・邦なつきに別れを告げに訪れる場面。もとは能の「小袖曽我」で、これは清元に振付けたもの。勘当されている弟五郎をかばう兄十郎、五郎との対面を拒みつつも最後には許して兄弟に黒の小袖を贈る母、愛音の情感あふれるやりとりが涙を誘う。里の娘に扮した朝峰ひかり琴まりえも花を添えて、心に残る場面となった。

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第八場「夜討曽我」
 いよいよ仇討ち決行の場である。花道から黒小袖を身につけた曽我十郎・涼紫央と五郎・立樹遥がりりしく登場。恋人の大磯虎御前・五峰亜季、化粧坂少将・一原けいとそれぞれ別れを告げ、工藤祐経の屋敷に忍び入り、見事その首を討ち取ってみせるまでを踊る。立樹の緊張感溢れる動きと、その直前の別れの悲しみを踊る五峰一原の愁いを帯びた風情が対照的で、緩急ある絵作りになっている。
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第九場「面影曽我」
 
物語もエピローグに近づき、すでにこの世のものではなくなった曽我兄弟の墓に、十郎の恋人だった大磯虎御前が詣でるという一場。清元の「尾花末露曽我菊」では案内の翁との語りの形だが、今回は松本悠里の1人用に振付、墓の前での切ない口説きや、別れがたい未練などを、松本悠里ならではの美しい所作でたっぷりと踊ってみせた。

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第十場「曽我祭り」
 曽我兄弟の仇討ち話のフィナーレは、常磐津「勢獅子」で、神田明神を背景に鳶の頭や芸者が賑やかに盛り上げるお祭り。芸者には京三紗光あけみ、鳶の頭には箙かおるにしき愛が扮して、踊りのさなかには100周年記念の手じめも入って、粋にいなせに演目のラストを飾ってくれた。

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           ☆        ☆       ☆

 『蝶千鳥百日曽我』が終わると、この『舞踊会』のとっておきの演目が控えている。宝塚の至宝春日野八千代の踊る長唄『振袖菊』である。「菊」という有名曲を振り袖若衆姿で踊るところから、このタイトルが付けられた。黒の振り袖に紗の小袖をまとった春日野八千代が登場するだけで、一気に会場が華やぐ。振付は四世宗家家元花柳壽輔で、花柳芳次郎時代から春日野のための振付を担当してきた仲だけに、今回も優雅な所作とともに、めでたさと明るさをふりまく動きを取り入れている。最後は菊の生け垣の上にせり上がる春日野八千代。見事に祝典のトリを踊り納めてみせた。

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 そして舞踊会ならではの“待ってました”の『フィナーレ』
 黒の紋付きに緑の袴で出演者たちが次々に登場、このシーンだけは洋楽で日本舞踊を踊ってくれる。
 下級生たちから始まった「花詩集」のメドレーでは、蘭寿とむ北翔海莉のタンゴに大和悠河も加わって、いづれも神妙に踊っているのが可愛らしい。悠未ひろ万里柚美と踊るなかに柚希礼音も加わるなど、組み合わせの妙も楽しめる。

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 曲が変わって、遠野あすか陽月華桜乃彩音「モン・パリ」を清楚に可憐に踊ると、壮一帆愛音羽麗を中心に男役たちがボレロで続ける。涼紫央立樹遥、専科の出演者も加わり、そのまま盛り上がって銀橋で観客に挨拶。本舞台に戻ると、松本悠里に伴われた春日野八千代もラインナップに加わり、この公演の盛況を感謝するように穏やかな笑顔で三方に礼をする。いったん幕は閉まったものの、止まない拍手とスタンディングのなかで再び幕が上がり、出演者の満ち足りた笑顔のなかで、賑やかに阪急創立100周年記念の第48回『宝塚舞踊会』は幕を閉じた。(文・榊原和子/写真・岸隆子)

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投稿者 宝塚プレシャススタッフ 2007/10/22 19:21:01 榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー | | トラックバック (0)

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