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2007年11月10日 (土)

榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー

リピートしたくなるシンプルさが魅力 宙組全国ツアー『宙 FANTASISTA!!』

宝塚宙組全国ツアー 千葉・市川公演(11/2)
『宙 FANTASISTA!!』

(⇒全国ツアー『バレンシアの熱い花』レビューより続く)

(お断り:写真は梅田芸術劇場公演のものです)

 藤井大介がつくるショーの魅力は、構成のシンプルさにあるのかもしれない。大和悠河陽月華の新コンビ率いる宙組のお披露目『宙 FANTASISTA!』は、宇宙に誕生した王子(大和)が月、火星、水星…と、最後の太陽までをひと巡りし、最後に立派な王として立つまでが描かれる。場面はどれもスピーディでメリハリがあり、初めて観た人も帰り道で「あの場面…」とすぐに思い出せるような色に満ちている。すなわち“シンプル”な骨子に細心の肉付けを施したところに藤井の手腕があり、一方で宙組生の、舞台に対する熱意がこのショーの娯楽性を高めてもいる。こうなると、“シンプル”は繰り返し観たいと思わせる強力なファクターとなるのだ。

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 全ツ版は構成に変化はほとんどないが、芝居同様に役替わりがあるので、そこを中心に振り返ってみよう。
 まずはオープニング。宝塚・東京公演ではクリスタルの形をした卵から生まれていた王子FANTASISTA(大和悠河)が、今回は群舞のフォーメーションが割れた向こうで、階段にちょこんと座って登場。子どものようにあどけない表情で舞台の前に歩いてくる大和と、満面の笑みで迎える宙組生たちが微笑ましい。宙吊りの宇宙車はなくなり、FANTASISTAはアスカルゴ(華凛もゆる)から肩掛けカバンを受け取って宇宙の旅に出ることに。前半では大和陽月ら多数の、出発シーンでは大和一人での客席下りもあり、客席は手拍子で盛り上がっていた。ちなみに肩掛けカバンには、毎回ご当地の名産品が仕込んであるらしいので、こちらにも注目。

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 次は月。美羽あさひを中心とした女神たちが、FANTASISTAを迎えてポップに盛り上がる。美羽と共に踊る3人口には大海亜呼が入り、十輝いりすと対の、七帆ひかるが抜けたポジションには凪七瑠海

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 明るい月の場面から一転、アダルトな空気が立ちこめるのが火星。セット前の悠未ひろ珠洲春希の官能的なダンスが濃度を増し、チャネルには北翔海莉の代わりに七帆ひかるが。七帆は低音が耳に心地よく響き、妖艶なマルス(陽月)と絡んで踊るダンスも、乱れた髪の下からのぞく目に色気がある。群舞を切り裂くように踊る陽月の、強い意思をたたえた表情が美しい。

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 さらに場面が変わり、水底を思わせる不思議な世界・水星にたどり着いたFANTASISTAは、カロリス(蘭寿とむ)に誘われて踊る。長い髪をなびかせて踊る蘭寿に夢幻の風情が漂う。
 木星では、ソロに音乃いづみが入った。娘役の群舞と美しい歌声で聴く「Jupiter」は癒しそのもの。慈しみと愛情を一心に込めて大和を見守る陽月と、それに応えて歌う大和の表情がいい。前後するが、火星と水星の間で舞台を横切る罪人、チリの群れが男役から女役になったことで、木星でのこの昇華につながりが出来たように感じた。

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 ここからはスノッブな展開。金星は悠未、十輝、七帆ら長身の男役が、ロココ調のドレスと宝石を身に付けた美女イシュタールで登場。それぞれコケティッシュに「ヴィーナス」と言って暗転。
 舞台中央に目を移すと、クラブ・ヴィーナスのフロアが出現中。派手なスーツに身を包んだラダS(蘭寿)がラダAたちを従え、色気をにじませて客席に視線を向ける、これぞ男役!といった名場面。蘭寿はそのまま客席下りもするので、客席のテンションは否応なく急上昇だ。そこへ真打ちのFANTASISTAがこれもスーツ姿で現れ、ビーナス(陽月)ら娘役たちと、早替わりの悠未、十輝、七帆も加わって大人のムードたっぷりの中詰めへ。一度ラインナップで終えた後、そのままロケットへ流れ込むところが、観客の感情を途切れさせず見事。

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 楽しい中詰めから急転、場面は暗い思念が渦巻く土星へ。大詰め間近でありながら、床に倒れこんだり、ジャンプを多様したりとハードな振付を全力で踊り切るリング女A(陽月)、リング男A(蘭寿)ら群舞の姿が観る者の胸を打つ。
 やがて眩いばかりの銀の衣装に身を包んだ大和が、蘭寿、悠未、七帆ら男役陣をバックにヒップホップ調のダンスを踊るフィナーレへ。アイドル性を振りまきながら弾むように踊る大和が、このダンスと絶妙に合う。トリは大和陽月のデュエットダンス。ラストのポーズは差し伸べる二人の腕と顔の向きとがピッタリ合致し、このコンビの相性の良さが、改めてうかがえた。

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 半年前にこの公演が始まった当初は、“若い”雰囲気をもつ宙組だけに、表裏一体である“未完成”な部分が多く目に付いたと聞く。それでも毎回それぞれが手を抜くことなく務めてきたであろうことは、回を追うごとに好意的な評価が増していったことが示している。元々、長身で姿のいい男役の多い宙組。千秋楽までその勢いを損なうことなく、それぞれが華と実力を身に付け、次回作への糧としてほしい。(ゲストライター・佐藤さくら/写真・岸隆子)

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◆宝塚歌劇宙組公演◆
ミュージカル・ロマン『バレンシアの熱い花』
作・演出/柴田侑宏 演出/中村暁

コズミック・フェスティバル『宙 FANTASISTA!!
作・演出/藤井大介

・全国ツアー公演(⇒宝塚歌劇団公演案内へ
 公演期間:10月30日(火)~11月25日(日)

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投稿者 宝塚プレシャススタッフ 2007/11/10 22:17:48 榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー | | トラックバック (0)

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