榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー
“宝塚の春野寿美礼”、ありがとう、そしてアデュー 退団会見&パレード
花組東京宝塚劇場公演千秋楽(12月24日)
春野寿美礼 退団会見・パレード
(⇒『春野寿美礼サヨナラショー』より続く。)
宝塚の舞台に別れを告げる『春野寿美礼 サヨナラショー』を終えて、あとはパレードを残すだけとなった花組の主演男役春野寿美礼が、12月24日夕刻からの退団記者会見に臨んだ。
黒紋付きに緑の袴姿で、顔にはまだ舞台化粧が残っている。だがその表情は、全てを無事やり遂げたさわやかな達成感とでもいうようなものが溢れていて、明るく清々しい。まずは記者団に春野からの挨拶という形で会見は始まった。
「皆さま、今日たった今、無事に舞台を終えて、宝塚を卒業することができました。本当に何事もなく、無事に終わったことが、ただただひたすら嬉しい気持ちです。
えー、ホッとしているのですが、皆さまを前になぜかまだ緊張しております(笑)。17年間でしたが、本当に皆さまにもお世話になりまして、どうもありがとうございました。また新しく一歩を踏み出して、がんばってまいりたいと思います」
すぐに記者からの質問が始まる。
──最後の舞台を終えて、今改めて思う宝塚とは、春野さんにとってどんな場所でしたか?
「私自身が宝塚の舞台を見たときに、夢を見ることを宝塚から教えられて、そして私が選んで、宝塚歌劇団に入団して、今は本当に宝塚歌劇団によって、さまざまな経験をさせていただくことができまして、感謝の気持ちでいっぱいです。その宝塚歌劇団を選んだのが自分だということが、たいへん自分で誇らしく思います」
──幸せでしたか、17年間?
「…幸せ、でした(笑)。はい」
──今日1日の心境を振り返ってほしいのですが。またそのなかで卒業するんだという実感がありましたら、そのことも。
「今日は…意外といつもどおり、いつもよりも落ち着いた気持ちで、朝起きたときからとても落ち着いていて、ファンの人の前を歩いている時もとても落ち着いていて、生徒に会っても落ち着いていて、舞台に立っているときもいつもより──神経がものすごく敏感になってしまう時があるのですが──、本当にすべて落ち着いていて、それは、皆さまがきっと私に対して深い愛情を送り続けてくれているから、私が安心していられる落ち着いていられるんだ、と思うんですね。なんでこんなに、落ち着いて普通でいられるんだろうと、自分がとても不思議だったのですが。なので、いつもと同じように今日1日が終わってしまって。
退団だなって思う瞬間というのは実感がないというか、確かに今、退団の記者会見をしているのですが、“退団するんだ”という、そういう思いは今日1日のなかで、まだわき起こってきてはいません」
──大階段を降りる時もそういう心境でしたか?
「大階段を降りるときは、なぜか幸せな気持ちでしたね。ただショーの本編で羽根を背負って、パレードで降りてくるときに、その時たまたま衣装部さんに“これが最後だよ”、羽根を背負って降りるのはこれが最後だよ、と言われたときは、ちょっと噛みしめました」
──今日は大きなくぎりになりますが、明日まず何をしたいですか
「何をしたい、ですかー?(笑)
明日はクリスマスなので(笑)、えー、そうですねー、とりあえず明日からは本名の自分に戻りますので、宝塚の生徒ではなく、1人の本当に小さな存在の人間であるということを自覚……するための日々を送っていくと思います(笑)。はい。
でもずーっと宝塚の生徒としてずーっと宝塚で過ごしてきたので、明日はちょっと家族と一緒に過ごしたいなということは考えています」
──新しい一歩ということで、今後のことでエンターテインメントとかで具体的に決まっていることがあれば?
「えーと…これからは、えー、具体的に何か活動するということは考えてません。もしかしたら私自身、音楽や歌がとても好きなので、自分がやりたいなと思うようなことがあれば、歌ったりするかもしれませんが、そういう活動をしようというふうには思ってません。
今まで宝塚歌劇団の春野寿美礼として過ごしてきて、皆さまから本当にたくさん愛されて、そのうえで生活をしてきましたので。
でも明日からはそうでなくなるので、先ほど言いましたように自分が本当に小さな存在の人間であるということを自覚したうえで、日々、日常を送っていきたいと思っています」
──退団されるかたはいろいろいられて、泣かれるかたもいますが、春野さんは泣いてないと思うのですが。そのへんはご自身の性格的なものなのか?その心境というのは?
「え?(笑)そうですねー、あまり泣かないというか、皆さんの前で泣くようなことは少ないかもしれません。どちらかというと泣くときはほっといてほしいという時で。ひっそりと1人で涙を流したりとかそういう感じでしょうか。
ただ、皆さまが応援してくださる愛情だとか、仲間が送ってくれるエールを受けると、私はほんとうに幸せだというものを最大限感じるので、涙が流れるというより、みんなの笑顔を見ると、私自身も心の中が笑顔になります」
──今日は映画館などで生中継しましたが、そういうことを意識されまたか? また宝塚を取り巻く環境がそういうふうに変化していくなかで、宝塚に変わらないでいてほしいことは?
「えーと、今日、映画館などでやっていることは分かっていたのですが、舞台に立っているときは本当に“無”、無という状態というか。はい、そういう感覚でやっていました。
宝塚歌劇団は、やはり時代とともに変化を今までもしてきましたし、これからもきっとそういうふうにしていくんだろうなと思うのですが、ただ1つ変わらないのは、清く正しく美しくというモットーがあって、それをもとにみんなが舞台を作って、お客様に夢を見せていることで、そこだけは変わらないだろうし、変わってほしくないなと思います」
──確認ですが、芸能活動は今のところ予定されてないということですか?
「そうですね」
──当面は春野寿美礼ではない、本名に戻って普通の女性として生きていかれる?
「はい。そのつもりです」
──なんか残念な気もしますが。
「(笑)」
──今日、今の段階で、芸能活動はしないし見えていないということですか?
「見えていないというか」
──気持ち的にはどうなんです?そういうつもりがない?
「はい。宝塚の舞台で、私は燃焼したいとずっと思っていましたので、今はそういう気持ちにはなっていません」
──燃焼されましたか?
「燃焼しました」
──もう一度突っ込みますけど(笑)、歌は続けられないんですか?
「歌に関しては、いろいろとあると思うのですが。自分が今まで生きた中でも音楽というのは、自分と本当に近いところにあったものなので、音楽にはずーっと携わってはいきたいなとは思っているのですが。
もし自分が、“あ、これをやりたい”と1人の人間として考えたときに、舞台人としてではなく1人の人間として考えたときに、自分がこれは歌いたいなあとか、思うことがあればやる可能性はあります」
──具体的に歌いたいなあという曲は?
「ないです(笑)」
──何がきっかけになるのですか?
「何がきっかけになるかは分からないですね。
今までは“春野寿美礼”を中心として自分自身も生活をしてきたので、それをちょっとやめて、本名の自分自身と向き合って、それを探していくという感じです」
──では歌う可能性もあると考えていいんですね?
「(笑)はい」
かなり突っ込んだ質問が最後まで続いたが、それだけ春野寿美礼の舞台を惜しむ気持ちが記者団のなかにも強かったといえる。その1つ1つに、正直に誠実に答えようとしていることもまた、伝わってくる。少なくとも、まずは本名に戻り、1人の女性として生活をしていくことへの春野の期待、そして覚悟のようなものが、しっかりと伝わってくるやりとりだった。
全ての質問に答えた春野は、最後に深々と頭を下げた。その春野に記者やカメラマンから大きな拍手が送られて、最後の会見も終了した。
会見から約20分ほどで、退団者のパレードは始まった。
朝から吹いていた風が少し弱くなったが、逆に夜の底冷えが始まって、しんしんと寒さが足元から昇ってくる。この日のギャラリーは8000人。だがもっと多いような気がするのは、このあたりの人出がいつもより賑やかだからか? 帝国ホテル側には、日比谷公園のイルミネーションを見に来た一般の通行人がひっきりなしに通っているうえに、劇場前の通りは丸の内のイルミネーションへの通り道になっているから、昨年とは違って、人口過密状態になっている。
そんななかで白いお揃いのトレーナー姿のファンは、帝国ホテル側から日比谷三井ビルの方向にまでえんえんと並んでいて、その行儀よく整然とした姿に思わず胸を衝かれる。あの強風の朝方から今まで、どんな思いで、この場所で佇んでいたのだろうか。会見でも春野が、何度も語っていたように、本当にたくさんの人たちから“愛されている”という意味がリアルに伝わってくる。
いよいよ別れの時間が来て、楽屋口から1人ずつ退団者が出てくる。立ともみ、嶺輝あやと、花順風香、鈴懸三由岐。それぞれ、楽屋口そばに並ぶファンクラブの人たちに挨拶をして、またはエールを送られながら、劇場正面のカメラマン席まで歩いてくる。緑の袴に花束を胸に抱え、舞台化粧を落とした顔は、それぞれこんなに美しかったのだと思う。誰もがいい表情をしているのだ。
楽屋口のほうで悲鳴に近い「キャーッ」という声があがり、春野寿美礼が出てきた。ファンたちがいっせいにペンライトに点灯する。聖夜の星の光が劇場前に溢れかえる。そのなかを春野は、遠くからでもわかるいっぱいの笑顔を見せながら歩いてくる。
まずは三井ビル側のファンのそばまで行って別れを告げ、そして、ゆっくりゆっくりと沿道のファンの1人1人を確かめるように見回しながら、劇場前のカメラマン席に近づいてくる。化粧をしていない春野は、本当にさわやかで優しげで、自然な笑顔で笑っている。
撮影ポイントで春野が立ち止まると、ファンからいっせいに声があがる。「オサさーん」「オサちゃーん」。その声に応えるように、左右を振り向いてにこにこと手を振る春野に、ファンの声も次第に切なげな呼び声に変わっていく。そんな一瞬、春野の眼から、すーっと涙が落ちた。それは、すぐに笑顔のなかに溶け込んでしまったが、確かに彼女はそのとき泣いていた。
撮影が終わり、最後のパレードに歩き出そうとする春野に、ファンからの一斉コールが響く、「オサさん、大好き。愛してまーす」。その声に重なるように、ギャラリーからも記者団からも、一斉に「オサさーん」という呼び声や「ありがとう」という言葉が投げかけられる。
そんなたくさんの声にうなずきながら、心から嬉しそうに手を振り応え、春野は、パレードの列の最後、日比谷公園側に曲がる角に並ぶファンのところまで歩いていく。そのあたりは、すでにすさまじい人混みになっていて、春野も押されて、その細い肩や白い手が人波にもまれているのが遠目にもよくわかる。だが、そんななかでも、車に乗り込む寸前まで、彼女は劇場の方向を振り向き、見送るファンたちに手を振り続けていた。本当に最後の最後まで、この人はこんなにも一生懸命に、“宝塚の春野寿美礼”を生き、まっとうしようとしているのだ。その姿はりりしく神々しく、同時になんといじらしく愛らしいことか。
宝塚歌劇団の、花組の、主演男役としての重責は並々ではなかったはずだ。その務めを無事果たして、今、1人の女性として彼女はこの場所から旅立っていく。また、いつかどこかで新しい夢を生きている彼女に会える日もあるだろう。その日を信じて今はいったん別れを告げよう。“宝塚の春野寿美礼”、ありがとう、そしてアデュー。(文・榊原和子/写真・吉原朱美)
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投稿者 宝塚プレシャススタッフ 2007/12/26 16:27:33 榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー | Permalink | トラックバック (2)
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