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2008年2月22日 (金)

中本千晶のヅカ★ナビ!

《中級編》タカラヅカでも白洲次郎

レベル:★★☆(中級編)
分野:日本の戦後史
対象:「タカラヅカなんて男の観るもんじゃない」っていう団塊世代のおじさまも是非!

 魅惑のワルを主人公にした「エル・アルコン」、いかにも宝塚らしいロマンス「君を愛してる」、そして太平洋戦争前後の激動の日本を舞台にした「黎明(れいめい)の風」。

三作品三様のこのバラエティー、とても同じ劇団の作品とは思えない。
だからタカラヅカは飽きない、やめられない。
(しかも、この次はブロードウェイ発のミュージカル「ME AND MY GIRL」だし!)

さて、宙組公演「黎明の風」が取り上げるのは、夢を売るタカラヅカで取り上げるのはどうなの?とも思える、まだ生々しさの残る時代のお話である。

戦後日本の復興を影で支えた気骨の日本人、白洲次郎(轟悠)と、米軍最高司令官マッカーサー(大和悠河)の対決と友情。そして妻正子(陽月華、宝塚大劇場では和音美桜)との夫婦愛。
この2つを軸に、戦争への突入、戦後の混乱、そして日本の独立までを描く。
劇中ではサンフランシスコ平和条約締結を報道する映像もみることができる。

ストーリー展開はテンポ良く、演出の石田昌也氏ならではのギリギリなユーモアが説教臭さを緩和していて、楽しんで観ることができた。
これは「無所属の男」白洲次郎を主人公に置いたからこそなせる業か?
あるいはこれも、戦後がすでに歴史のなかに風化しているということなんだろうか?

マッカーサー演じる大和悠河、素顔はどうみても「カワイイ」系のなのに、黒いサングラスにパイプをくゆらせて飛行機から降り立つあまりにも有名な姿がばっちりハマっているのが男役の妙!
日本男児のなかの日本男児、白洲次郎の轟悠と並び立つと、まさに日米。このコンビならではのコントラストだ。

だがこのお芝居を支えるのは、歴史の教科書に名を残す著名人だけではない。
たとえば、戦時下で米軍向けプロパガンダ放送のアナウンサーを無理やりさせられていた日系女性「東京ローズ(美風舞良)」の悲劇。

笑っちゃったのは戦後の混乱のなかで南朝の末裔として「われこそが本物の天皇なり」 と主張したという「熊澤天皇(夏大海)」だ。
これギャグかと思ったら実在の人で、当時はマスコミでも話題になったらしい。

自らを「ただの事務屋」と終始謙遜し続ける近藤さん(美郷真也)もいい味出していた。彼こそが戦後日本の成長を地道に支えた日本人の代表じゃないか。

タカラヅカは歴史の勉強になる、うまく活用すれば受験勉強にだって役立つ・・・と拙著「宝塚読本」では書いた。
その意味でいうと、この作品が取り上げる時代も視点も「日本史のヤマ」ではないかもしれない。
でも試験勉強の差しさわりにならない限りは観て欲しいと思った。

いっしょに観劇した母にとっては子ども時代の話なのだ。幼い頃、おぼろげに聞いたニュースが登場して懐かしさいっぱいだったらしい。

だが私にとっては生まれる少し前の知らない時代だ。
そう「近くて遠い時代」の話。

だからこそ、今、母といっしょに観ることができてよかったと思う。(中本千晶

☆ステップアップのための宿題☆
白洲次郎を妻として支え、自身も作家として活躍した白洲正子。今ちょっとしたブームのこの夫妻が暮らした家「武相荘」は現在も公開され、センス溢れる暮らしぶりを偲ぶことができますよ。

※武相荘:東京都町田市。小田急線鶴川駅から徒歩またはバス。
 (⇒詳細はコチラ

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2008/02/22 11:00:00 中本千晶のヅカ★ナビ! | | トラックバック (0)

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