榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー
観るとハッピーになるミュージカル! 『ME AND MY GIRL』前夜祭
オーケストラが、おなじみの軽快で楽しげな序曲を奏で始めると、いきなり会場は『ME AND MY GIRL』の世界に染まる。
オープニングは、今回の月組版ビルとサリー(瀬奈じゅんと彩乃かなみ)による予告編。
第1幕の第1場、ビルとサリーがヘアフォード家の居間にやってくる。ちょっとおっちょこちょいな下町の恋人たちは、「大英博物館より大きいね!」と豪華で壮大な屋敷に大はしゃぎ。だが「ここでお前は俺の奥方になるんだ」と言うビルに、あまりの生活の違いに不安を感じるサリーは聞く。「私たち、別れなきゃならないなんてことないよね?」「俺と俺の女の子を、いったい誰が別れさせるんだ?」と答えるビル。テーブルに腰掛けて互いへの愛を歌う2人、主題歌「ME AND MY GIRL」のデュエットがしみじみと始まり、やがて心躍るリズムに変わっていく。瀬奈じゅんの温かい声、彩乃かなみの高音の美しさ、踊る2人の軽やかなタップの音。この弾むようなハートウォーミングな世界こそが『ME AND MY GIRL』なのだ。
歌い終わりはお約束のテーブルもぐり。そして観客の拍手に迎えられてテーブルの下から出てくる2人。途中で落とした帽子を拾ってお茶目に笑う瀬奈じゅんはすっかりビルになりきっていた。
カーテン前に司会の出雲綾が登場して、この作品について簡単に説明する。「1987年の初演は剣幸とこだま愛、1995年には天海祐希と麻乃佳世で再演された作品を、今回は瀬奈じゅんと彩乃かなみが演じます」。そしてこの公演は彩乃には退団公演になることなどや、月組一同、毎日稽古に励んでいることも報告される。
続いて出演者が登場。「ランベス・ウォーク」のメロディとともに、ビル・瀬奈じゅん、サリー・彩乃かなみ、ジョン卿・霧矢大夢、パーチェスター・未沙のえる、ジェラルド・遼河はるひ、ジャッキー・城咲あいとダブルキャストの明日海りお、へザーセット・越乃リュウ、そして最後に自己紹介でマリア公爵夫人・出雲綾というメンバーが舞台上に並んだ。
瀬奈じゅんは「今の月組で作り上げる『ME AND MY GIRL』を楽しみにしていただきたいですね」「私個人と致しましては、小道具に慣れ(爆笑)、サリーを愛する気持ちを大事にしていきたいと思います」。
彩乃かなみは「過去に月組の上級生が作り上げられた『ME AND MY GIRL』に学びつつ、私らしく、今の月組らしい『ME AND MY GIRL』にできたら」、「そしてビルとサリーの愛を生きていきたいと思います」。
霧矢大夢は「こんな素晴らしい作品に出演できて、ここにこうして立っていることも不思議な気がいたします。ビルとサリーの愛に負けないくらいジョンとマリアの熟年の『ME AND MY GIRL』(笑)をお見せしたい」と宣言、観客から大きな拍手を受けていた。
続いて初演のパーチェスター役に再び取り組む未沙のえるは「嬉しさも怖さもある」「また新たな気持ちで取り組みたい」と内に燃えるものを見せながらコメント。ジュラルドの遼河はるひは「ヘアフォード家の子孫でジャッキーの婚約者です。当時の上流階級のおぼっちゃまらしさと脳天気ぶりを見せられれば」、城咲あいは「有名な作品でジャッキーという大役をさせていただくことになり嬉しいです」、明日海りおは「初めて女役をさせていただきます。まだまだ勉強することがたくさんありますが、綺麗に出られるようにがんばります」。
越乃リュウは「再演に出ていて運転手などをさせていただきました。今回はお屋敷の執事ヘザーセットでランクが上がりました(笑)、よろしくお願いいたします」。
そして出雲綾は「威厳があって芯が強く女らしく、深いところがある素敵なマリアという人になれれば。マリアの存在でヘアフォード家の歴史やビルとの関係が描き出せればと思います。私にとってもこの公演は退団公演となりますので、楽しく最後までがんばりたいです」
最後に出雲の「みなさん、お稽古がんばりましょう」という言葉に全員で「ホイ!」と下町風に賑やかに答えて退場していった。
カーテン前に残った出雲綾が、この作品の初演から今回に至るプロセスを紹介する。
「ロンドン初演は1937年、1985年に再演されて大ヒット。1986年にブロードウェイに上陸、話題をさらいました。宝塚の初演は1987年、剣幸、こだま愛で大評判となり、同年中に再演。また1995年には天海祐希、麻乃佳世で再演されました」。そしてその紹介の最後に、すでにこの世を去った初演のスタッフたち――演出家の小原弘稔、翻訳の清水俊二、編曲の橋本和明、音楽野村陽児、振付山田卓、装置石濱日出雄の名を読み上げ、「ありがとうございました」と、感謝の言葉で結ばれた。
再び名曲の披露が続く。銀橋でジョン卿の霧矢大夢と2人のジャッキー・城咲と明日海が歌う「私の手を握って」。ダンディで渋いジョン卿とあでやかな2人のジャッキー、見応え聞き応えのあるシーンだった。
そのあとはお楽しみ、ゲストのトークコーナー。初演メンバーから剣幸、こだま愛、涼風真世、再演メンバーとして麻乃佳世が登場。
剣「皆さま、お久しぶりです。大好きなこの作品を、今回月組の皆さんがどう演じてくださるか、楽しみにしています」
こだま「1週間前に岩谷時子さんにお目にかかる機会があり、“がんばってね”というお言葉を預かってまいりました。客席から観るのを楽しみにいます」
涼風「初演でジャッキー、再演ではジャッキーと役代わりのビルを演じさせていただきました。退団後もジャッキー、今はマリア公爵夫人を演じさせていただいてます」
麻乃「この公演で退団しましたので、思い出深い公演です。ハッピーな気持ちになるミュージカルです」
初演と再演の公演ビデオが映写され、笑いながら楽しそうに見ている出演者たち。「街灯によりかかって」を歌う剣ビルのかっこよさや、小道具のリンゴ扱いの巧みさに拍手が寄せられる。こだまと麻乃は、まさにキュートなサリーで、ジャッキーの涼風の色っぽいシーンもある。そして最後はもちろん「ランベス・ウォーク」で賑やかに盛り上がるシーンが映し出される。
ここからは瀬奈じゅんと彩乃かなみもトークに参加する。
剣「体に染みついてる部分があって、曲を聴くと動きも思い出すんですね。あの頃の月組メンバーがまたぴったりでしたから、これをできたのはラッキーだったなと思います。
昨日、稽古場に行きまして、今の月組さんの稽古も見せていただきましたが、皆さんそれぞれがんばっていたので、舞台を拝見するのが楽しみです」
こだま「あんな巨大なスクリーンにパンパンな私の顔が(笑)。でも、こうして何度も上演される作品に出られて幸せです」
涼風「いやー大胆でしたね(笑)。ジャッキーを演じるときは、自分が男役だったのでいろいろ上級生に相談したりしました。今となってはホントに縁のある作品なんだなと思います」
麻乃「再演だったのでとっても緊張していたのを覚えています。誰もが素敵なキャラクターなので、今回も観るのを楽しみにしています」
ここで出雲から「何か聞きたいことがあれば」と話を振られた瀬奈が、「個人的な質問なのですが、剣さんは帽子やリンゴなど落とされたときはどう対処されたんですか」(爆笑)
剣「落としたことない」(爆笑と拍手)
剣「落とすとか落とさないとか思わないほうがいいと思う。あれはビルがいろんなことをやって遊んでるわけだから。帽子を回すとかリンゴを放り上げるのを見せるが目的でやってるんじゃないし、落としたら“落とすためにやってるんだよ”みたいに、わざとぐらいに思わせるといいんじゃない?」
瀬奈「剣さんは手先の器用なかたで編み物がうまかったとお聞きしました」(笑)
剣「いや、編み物編んでも帽子はできないからね」(爆笑)
続いて彩乃かなみからも質問が。
彩乃「私は本当に台本を読んでいても感動するのですが、皆さんがこの作品の素敵だなと思うところは」
剣「それぞれにいろいろな誤解やすれ違いがあっても、最後に大切なのは“人が人を思いやるということだよ”というのが根底に流れていて、とても温かい作品だなと」
こだま「私はまだこの作品に出ると知らない頃、ロンドンで観たときに心が幸せになって、なんて素敵な作品だろうと。そしてサリーを演じられることになって演じてみたら、また本当に幸せになれました」
涼風「今おっしゃられたように、出ていてもハッピーになれるミュージカルなんですが、私は最後にウェディングドレスが着られるんだというので、それが楽しみでした」
麻乃「サリーはとてもピュアな魂を持っていると思います。私もそれを伝えたいと思っていました」
そのあと、未沙のえるが登場、剣との軽妙なやりとりが続く、そのなかでいちばん受けたのが、
剣「曲が鳴るとね」
未沙「思い出すよね」
剣「チャンチャンって」
未沙「え、ちょっと違うでしょ。それはお座敷の弁護士」(爆笑)
また、宝塚版を作ることで試行錯誤していたことも語られる。
剣「ロンドン版がブロードウェイ公演になったとき、階級制度のことなど、いろいろ変化していたから、私たちも稽古場で1つ1つの言葉が日本のお客様にどう受け止められるか、すごく研究を重ねて重ねて、それで作りあげた思い出があります。だからよけい一生忘れられない作品になりました」
そんなゲストたちの話を聞いて、最後に瀬奈が「皆さんが自然に体を動かしていらっしゃるのを見てすごいなと思いましたし、パワーを感じました。私たちもがんばっていきたいと思います」とまとめて、このコーナーは終了した。
そのあとゲストたちの歌に。麻乃佳世が「あごで受けなさい」でサリーの健気さを歌えば、「一度ハートを失ったら」をしみじみとこだま愛が歌う。剣幸は「街灯によりかかって」を、銀橋を渡りながら愛をこめて優しげに歌う。どれも心の深いところに届く言葉とメロディで、客席はすっかり『ME AND MY GIRL』の世界に浸りきっている。
そしてラストは、幕が開いて月組全員による、あの「ランベス・ウォーク」のシーンだ。
瀬奈じゅんのソロから始まり全員で大合唱となる。客席にも降りてくる出演者に観客も手拍子で応えて、まさにここはロンドンのランベス。このシーンがライブで、3月21日から毎日大劇場で見られると思うと期待が高まる。
フィナーレの挨拶では、それぞれゲストから今夜のイベントが楽しかったという感想が述べられる。そして瀬奈じゅんの「1人のラッキーより、2人のハッピー」というこの公演のキャッチフレーズとともに、「皆さま、ぜひ私たち月組の『ME AND MY GIRL』をご期待ください」と元気な言葉で締めくくられた。(文・榊原和子/写真・岸隆子)
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◆宝塚歌劇月組公演◆
UCC&シャディミュージカル
『ME AND MY GIRL』
Book and Lyrics by L.ARTHUR ROSE and DOUGLAS FURBER
Music by NOEL GAY
Book revised by STEPHEN FRY Contributions to revisions by MIKE OCKRENT
作詞・脚本/L・アーサー・ローズ&ダグラス・ファーバー
作曲/ノエル・ゲイ
改訂/スティーブン・フライ
改訂協力/マイク・オクレント
脚色/小原弘稔
脚色・演出/三木章雄
・宝塚大劇場公演(⇒宝塚歌劇団公演案内へ)
公演期間:3月21日(金)~5月5日(月)
・東京宝塚劇場公演(⇒宝塚歌劇団公演案内へ)
公演期間:5月23日(金)~7月6日(日)
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投稿者 宝塚プレシャススタッフ 2008/03/08 11:38:50 榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー | Permalink | トラックバック (0)













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