中本千晶のヅカ★ナビ!
《初級編》俺と、俺の女の子
レベル:★☆☆(初級編)
分野:恋愛の品格
対象:最近彼とギクシャクしがちなあなた、仲直りのきっかけに是非。
今月の宝塚大劇場の客席は、いつにも増して熱気に包まれている。
そう、あの話題作「ミーアンドマイガール」が上演中なのだ。
しかし、同じ話題作といっても、昨年の「エリザベート」のときの客席の熱気とはどうも種類が違う。
「エリザベート」のときは、「我こそはエリザベート通なり!」 といわんばかりのディープなファンが詰めかけ、トイレの列まで「さあ、今回のバージョンじっくり観させてもらうわよ」 という緊張感に満ちていた。
今回はもっとホワワワ~ンとしている。客層も、熱心なファンに加えて、白髪の夫婦から高校生までさまざま。
そして、幕が降りた後は、まさに春の陽気のようなハッピーオーラが客席中に満ち満ちてしまうのだ。
このミュージカル、ストーリーはごく他愛もないものだ。
ロンドンの下町ランベス出身、コクニー訛りまる出しの青年ビル(瀬奈じゅん)が、じつはイギリスの由緒ある貴族ヘアフォード伯爵家の跡継ぎだということが発覚。真面目で厳しい叔母のマリア公爵夫人のもとで貴族としての教育を受けることになる。
ビルにはサリー(彩乃かなみ)という恋人がいる。サリーは最初、ふって沸いたようなビルの幸運を素直に喜ぶが、やがて身分違いの自分はビルにふさわしくないことに気付き、身を引く決意をする。
「サリーのいない人生は考えられない」ビルは、いずこへか消えてしまったサリーを狂ったように捜し求め、ついに爵位も捨てて、荷物をまとめて出て行こうとする。さすがの厳格なマリア公爵夫人もビルを止めることはできない。
だが、そのころ公爵夫人の長年の友人であるジョン卿(霧矢大夢)は、思いもかけないどんでん返しを準備していた。
ジョン卿は当初、ビルのような青年が跡継ぎになることには反対で、サリーを利用して邪魔をしてやるつもりだったのだが、やがて、サリーの心に触れるうちに、ふたりのために一肌脱いでやろうと考えはじめたのだ。
(以下続く)
・・・とまあ、よくあるといえばよくあるシンデレラストーリーである。
この子供だましみたいなお話がどうして大人気なわけ? と、そんなイジワルな疑問を抱く人もいるかもしれない。
その答えは、まさに「ミーアンドマイガール」というタイトルにあると、私は思う。
劇中で、ビルは何度かサリーと自分とのことを「俺と、俺の女の子」 という。「俺と、俺の女の子=me and my girl」である。
下町の貧乏暮らしからいきなり大金持ちの貴族様という、人生ゲームでもありえないような境遇の変化のなかでも、ビルは相変わらずサリーを「俺の女の子」と呼び続け、その気持ちに一寸の揺らぎもない。
私などもビルのこのせりふを聞くと、つい胸がきゅん!となってしまう。
だって本当は、女性なら誰しも、好きな男性から「俺の女の子」呼ばわりされてみたいものなんだし。
いっぽうサリーはサリーで「これで私も伯爵夫人だわラッキー!」 などとは微塵も考えない。ビルの幸せだけを願って行動する「my girl」の鏡のような女の子である。
そりゃビルだって、サリーを離したくはないわな。
この、ビルの真摯さとサリーの健気さ。
そこには身分の低さも貧乏も、学歴のなさも関係ない。今風にいえば、ビルもサリーも「下流」だが人としての「品格」は高いのである。
いつものひねくれた私なら、「こんな話、現実にはありえない」というツッコミのひとつも入れたくなるところである。
だが、耳に心地よいミュージカルナンバーの数々、躍動感いっぱいのランベスウォーク、そしてコミカルな芝居のオブラートに包んで差し出されると、不思議と素直に受け取ってしまうのだ。
もしカップルで観劇すれば、彼氏は隣の彼女こそ「俺の女の子」であることを再発見するかもしれない。
そして、彼女は「俺の女の子」にふさわしい女性になろうと、改めて心に誓うかもしれない。
これぞミーアンドマイガールのマジック!(中本千晶)
☆ステップアップのための宿題☆
この作品に限っては、フィナーレが終わって幕が降りても、あわてて席を立たないこと。オーケストラの演奏がしばらく続きますから、耳を傾け、余韻を楽しみましょう。終わったら、オーケストラの皆さんにも盛大な拍手を!
投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2008/04/25 14:00:00 中本千晶のヅカ★ナビ! | Permalink | トラックバック (0)





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