榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー
より輝きを増したショー『ミロワール』 雪組全国ツアー公演
雪組全国ツアー公演(5月17日~6月15日)
『ミロワール』
(⇒「『外伝 ベルサイユのばら -ジェローデル編-』」から続く)
ショーは、今年1月から3月まで上演され好評だった『ミロワール─鏡のエンドレス・ドリームズ─』(作・演出/中村暁)の全国ツアー版である。人数は少なくなったが、このショーのよさは損なわれていないし、場面によってはうまく改訂されている部分もあり、悲劇的な『ベルばら』のあとに発散系で明るいショーという組み合わせは、相性抜群である。
プロローグは「鏡の宮殿」、彩吹真央、音月桂、彩那音に新しく大胡せしるが加わってのオープニング。鏡の精Sの水夏希のソロダンスは、よりシャープにしなやかに、白羽ゆりもより輝きを増して、途中の客席降りも含めて、金色の洪水のなか、一気に観客を“キラキラ”の世界に連れていってくれる。
第2章はピンクの衣装がかわいい「ハートダンス」、彩吹真央の笑顔と歌が心なごませる。娘役のメインが愛加あゆと沙月愛奈になり、どちらも優れたダンサーで見応えのある弾んだダンスを見せてくれる。観客のノリのよい拍手もあって、いつ見ても楽しい場面だ。
第3章はANJUの振付と水夏希のドラマティツクなダンスが冴えわたる名場面「メデューサの鏡」。真波そらが追う男のリーダーになり、新しく加わった柊巴や谷みずせもよく踊っている。追う者たちが石になったあとの水と白羽の抒情溢れるダンス、そして衝撃のラストシーンまで、息もつかせぬ展開に、客席も静まりかえる。
第4章は「白雪姫の鏡」で、白雪姫は彩那音で変わらぬかわいさ。注目の新しいシンデレラ役は大胡せしる、ややコミカルで意地悪度の増したインパクトある役作り。後ろの鏡の精には、休演の奏乃はるとの代わりに彩夏涼が入っている。最後の鏡のセリフは芝居に合わせて「世界で一番美しいのはフェルゼンの妹のソフィア」と決めて、次の場面に。
第5章は中詰「万華鏡」、スポットのなかの白羽が振り向いて華やかにスタート。彩吹、音月、真波、大凪が階段から小粋に下りてくる。アダルティな「チュニジアの夜」は、茶のフリンジスタイルの水夏希や娘役たちの官能的なダンスが見もの。水が最後に上方席にウインクを飛ばすシーンも健在。
曲が「シング・シング・シング」に変わると、音月と彩那が花道から歌って登場、中央には黒羽根ダルマに衣装が変わったオブジェクト(森咲、花帆、神、愛加)がセクシー。バックの歌手として蓮城と晴香がジャジーに歌っているなか、彩吹と沙月のシャープなデュエットダンス。他の4組は男役は柊、真波、大凪、愛輝、娘役は天勢、麻樹、山科、舞咲)でリフトも美しく決める。曲が気だるく変わると「ナイト・アンド・ディ」、シルバースパンの水と白羽の大人のデュエットダンスが始まる。お互いに焦らすようなやりとりを盛り込んだ振付(御織ゆみ乃)が、シックで色っぽい。そのままにぎやかなラインナップで中詰に。ラストに水がご当地の地名をシャウトするのも全国ツアーならではのお楽しみ。
第6章は彩吹の伸びやかな歌声で始まる「AQUAの鏡」。甲斐正人の音楽と平澤智の振付がイメージ世界を広げてくれる。この場面の水の柔らかなダンスと、全員のフォーメーションは見応えがある。水が白羽を横抱きにしてのリフトも回転数が増えて、よりダイナミックさを増した。やがて全員のコーラスで「AQUAのいのち」を歌いあげてさわやかに場面が終わる。
いよいよ大詰「鏡のエンドレス・ドリームズ」は、音月の「AQUAの地球」から始まる。AQUA5の持ち歌で軽やかなメロディは親しみやすく、客席から手拍子が起こる。その手拍子のノリのまま、ミロワールたちのロケットになだれ込む。中央には羽根を背負った白羽も参加していて、華やかさを加えている。
ロケットが終わると、男役たちの最大の見せ場黒エンビの「TIME TO LOVE」。水、彩吹、音月、彩那がイントロをハーモニーで聞かせたあと、たった5段の階段をスタティックな美しさで次々に降りてくる。飛鳥、柊、谷、真波、衣咲、大凪、大胡、彩夏、祐輝、愛輝、蓮城が、手の振りの高さや間合いまでビシッと揃った見事なボレロだ。最後に水がきりりと回転して正面でぴたりと静止する。そのときまで一瞬も目を離すことのできない圧巻のダンスシーンである。
そのシーンのまま、水が「メモリー」と甘い声で歌い出すと、後ろの階段に白のシンプルなドレスの白羽が現れる。宝塚の王道を感じさせるこのデュエットダンスは、一段と息の合ってエレガントなコンビぶり。頬を寄せ合うラスト、そして互いに微笑みながら下手に2人が去ると、いよいよフィナーレのパレードが始まる。エトワールは音月桂、主題歌をしっかりと歌い上げる。手拍子や拍手が盛大に送られるのも全国ツアーの楽しいところで、最後に降りてくる水夏希の大きな羽根にひときわ歓声と拍手が高まって、興奮のなかでショーは幕を閉じた。
この全国ツアーは、10日~12日まで札幌で公演、14日、15日の相模大野で幕を閉じる。(文・榊原和子/写真・岸隆子)
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◆雪組全国ツアー公演◆
宝塚ロマン『外伝 ベルサイユのばら -ジェローデル編-』
原作/池田理代子
外伝原案/池田理代子
脚本・演出/植田紳爾
ショー・ファンタジー
『ミロワール』-鏡のエンドレス・ドリームズ-
作・演出/中村暁
公演期間:5月17日(土)~6月15日(日)(⇒宝塚歌劇団公演案内へ)
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投稿者 宝塚プレシャススタッフ 2008/06/07 23:10:28 榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー | Permalink | トラックバック (2)
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なんと言っても、この軍服姿は、カッコ良いですね。 私も是非、機会があれば着てみたい。 ベルばらも楽しみのひとつでしたが、やっぱりショー好きの私はミロワールが楽しみで 楽しみでCDも毎日のように聞きながらこの日が来るのを待っておりました。 土曜日は1★列目センターよりの通路側から3列目 オープニングで客席降りがあるので、結構近くで見る事が出来て嬉しかった。 ナイト・アンド・デイの最後の掛け声が、市川~ カーテンコールも、千葉イェイ!と最高に盛り上がっておりました! なぜなら、ト... 続きを読む
受信: 2008/06/11 12:28:59
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千秋楽なのに、ベルばらは、、、しんみりと終わった感じでしたね。 みんな最後の余韻に浸りながら観劇されていたのかしら? 本公演から大好きだったミロワールが全国ツアーでまた観れる嬉しさの反面 この雰囲気だとショーも、盛り上がらずヤバイ感じなのかな~と思いながら幕が開く。 大劇場の千秋楽の動画を貼り付けしておきましたので、良かったら雰囲気だけでも 味わって観て下さいね。 第1章 プロローグ(鏡の宮殿) プロローグB 市川に比べると拍手の音は小さかったけれど、そんな心配もなくお客さんも... 続きを読む
受信: 2008/06/22 0:04:17