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2008年6月 5日 (木)

榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー

パワフルでノリのいいショー 花組『Red Hot Sea』

花組宝塚大劇場公演(5月9日~6月16日)
『Red Hot Sea』

(⇒「真飛聖と花組の新しい魅力 『愛と死のアラビア』」から続く)

 『Red Hot Sea』は、南の海が背景になったストーリー性のあるショーである。「海をめぐる要素を織り込んだ」と、解説にあるように、渚や波、舟や鳥などをモチーフにした場面が展開する。

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 オープニングの舞台にはボロ舟があり、このショーのナビゲーターとでもいった役割の愛音羽麗の妖精シェルや少年ペドロ・野々すみ花、3人の釣り人ウノ・ドス・トレス(夏美よう、大伴れいか、悠真倫)などが登場、素朴な海辺の風景から、華やかな海の中の熱帯魚のダンスになだれ込む。異動してきた大空祐飛が真ん中で踊っているのが新鮮だ。大空壮一帆未涼亜希を中心とした男役も、舞城のどか桜一花を中心とした娘役全員が衣装も鬘もカラフルなのだが、少し色彩がくどいのが残念。

 そのカラフルな熱帯魚のなかに白い衣装で真飛聖が爽やかに登場する。真ん中に立つことを素直に喜んでいるような晴れ晴れとした表情が、いかにも真飛らしい。

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 やがて海の光景は夕刻になり、赤い太陽のなかに真飛桜乃彩音のデュエットダンス。ここは曲もバラード風になり、5組のデュエットが加わる。そして男役のダンスなどが繰り広げられたのち全員のラインナップ。赤い羽根の真飛を中心に賑やかにショーの始まりである。

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 次のシーンは「カモメの海」、白いスーツで小粋な3人のアミーゴたち、大空・未涼・華形が現れ、シェルに海へと誘われる。そこはカモメの飛ぶ海、カモメの大空のデュエットや、カモメたち(花野じゅりあ、華耀きらり、白華れみなど16人)や波(壮、真野すがたなど16人)が登場、寄せては返す波の様子やカモメと戯れる男の姿を、御織ゆみ乃の振付が美しく映し出す。

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 続いて「幽霊船」、1人の燈台守・真飛が銀橋に現れ、海の彼方からやってくる夢を歌う。その後ろに船が通っていくとともに、男が待ち続けた幻の女・赤いドレスの桜乃が登場する。
 場面は一転して豪華客船の内部、パーティーが繰り広げられている。ドレスアップした亡霊の紳士淑女たち。歌手たち(未涼絵莉千晶、天宮菜生、芽吹幸奈)のボリュームある歌声が素晴らしい。燈台守の真飛も黒エンビに着替えて桜乃とジャズやタンゴを踊る。だが、いつしか幽霊船の人々は消え、再び燈台守は1人取り残される。

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 場面が「真珠の城」に変わると賑やかに3人のトロピカーナ・壮、真野、朝夏まなとが登場、海の底の真珠の城について歌う。幕が開くと絢爛豪華な海底の真珠の城で、桜乃が華やかに歌い踊る。このシーンで男役たち(貴伶良、白鳥かすが、祐澄しゅん、月央和沙、冴月瑠那、鳳真由、真瀬はるか、日高大地)がエイトシャルマンとして脚線美を披露、銀橋まで登場しているのが嬉しい。

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 桜乃が男役たちを率いたダンスや、大空、壮、愛音、未涼、華形、真野、望月理世、朝夏、望海風斗らによるラテンメドレーの展開のなかに、紫の衣装の真飛桜乃による「真珠とりのタンゴ」をジャズアレンジしたデュエットダンスが繰り広げられる。若いコンビのダンスは勢いがあって気持ちいい。

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 が1人残って真珠たちのロケットを率いて歌い、最後に「レッド・ホット・シー」と決める。

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 再び浜辺の光景に戻ると「ひき潮」。暮れなずむ浜辺の光景のなかで、大空舞城未涼野々華形月野姫花のカップルが恋の踊りを踊る。若央りさの振付がメランコリックで心ゆさぶる光景を作り上げている。

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 そのまま、浜辺は赤い夕日に染まっていくなかで、1つの悲劇「海が燃える日」が始まる。
 子供の誕生を待つ夫婦(マリオ・真飛とマルタ・桜乃)と町の不良であるの小競り合いをきっかけに、2つのグループの対立に変わる。ここの場面は男役たちの見せ場で、眉月凰以下8人のペスカトーレ、未涼以下8人の不良たちのダンスがドラマティック(振付・麻咲梨乃)。そしてマリオの死、彼が妻に言い残したのは、ペドロという子供の名前だった。

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 空を行く黒い棺桶、そして後ろを通り過ぎる葬列のダンスのイメージがまがまがしくも胸に迫る「海風」の場面は、やがて天国に昇っていくマリオの魂のダンスへと転換。舞城のダンスが空気を大きく動かすように力強い。大空、壮、未涼を中心としたヴィエントのダンスは文字通り風を感じさせるなかに、セリ上がりで水色の衣装に真飛が登場、安らかな喜びを踊る。葬列からこの海風のダンスに至る羽山紀代美の振付が、リズム感と優雅さがあり美しい。

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 物語の終章は、再びボロ舟のある光景で、ウノ・ドス・トレスと少年ペドロが客席から登場。母親の「お帰り」という声に迎えられてペドロの1日は終わる。

 そして舞台は再び海の中、たくさんの熱帯魚たちが客席から賑やかに登場する。銀橋のブルーのラテン衣装の大空を中心に賑やかなフィナーレが始まる。朝夏など若手8人の銀橋での主題歌歌唱のあと、主演コンビのデュエットダンス。赤いスパン衣装の2人は、リズミカルに大階段を上がり下りして、テンポと華やかさがある。リフトも見事に決まって大きな拍手を受ける2人は初々しい。

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 エトワール代わりに、壮、愛音、未涼、華形、真野が大階段で歌うパレードの始まり。衣装はなんとデニム素材、つまりジーンズなのだが、これがいかにも海というテーマにふさわしい天然の色と素材なのが面白い。主演コンビのみ宝塚らしい白い衣装だが、周囲とも違和感なく、新鮮で若々しいフィナーレの光景となった。

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 さて、この『Red Hot Sea』だが、全体の陽気さ、パワフルさ、ノリのいい曲を選んでいるなど、けっしてショー全体の構成は悪くないのだが、「熱帯魚」や「真珠の城」の色彩感覚と、出演者の見せ方などの雑然とした印象はこの演出家の欠点で、かつらや衣装、そしてステージングをセンスアップすることで、舞台全体の印象を上げることにつながるはずだ。とくに絵の具をぶちまけたような色の氾濫には考慮が必要だろう。

 そんな課題もあるこのショーだが、大空の加入や若手のフィーチュアで、新生花組の新しい力を大きく感じさせてくれて、これからの真飛聖の花組を期待させてくれる舞台になっていた。(文・榊原和子/写真・岸隆子)

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◆宝塚歌劇花組公演◆

宝塚ミュージカルロマン
『愛と死のアラビア』―高潔なアラブの戦士となったイギリス人―
Based on the novel BLOOD AND SAND by Rosemary Sutcliff
Copyright (c) 1987 Sussex Dolphin Limited
Japanese musical performance rights arranged with
Sussex Dolphin Limited c/o David Higham Associates Ltd., London
through Tuttle-Mori Agency, Inc., Tokyo
原作/ローズマリ・サトクリフ
脚本・演出/谷正純
山本史郎訳「血と砂」(原書房刊)を参照

グラン・ファンタジー
『Red Hot Sea』
作・演出/草野旦

・宝塚大劇場公演(⇒宝塚歌劇団公演案内へ
公演期間:5月9日(金)~6月16日(月)

・東京宝塚劇場公演(⇒宝塚歌劇団公演案内へ
公演期間:7月11日(金)~8月17日(日)

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投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2008/06/05 19:26:18 榊原和子の宝塚初日&イベントレビュー | | トラックバック (0)

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