公演情報エトセトラ
『Ladyx7』―大浦みずきさん・宮田慶子さん・前田清実さん対談
大浦みずきのダンスプロジェクト「GIGEI-TEN」の第2弾『Lady x 7(レディ・バイ・セブン)』が9月26日から始まる。「踊る場を作ろう」「言葉と踊りの融合を」とのコンセプトで始まったこのプロジェクトの第1弾『コインランドリー』は、昨春、青山円形劇場で上演され、ダンスなのにストレートプレイを観たような気になる舞台だった。第2作では台詞を際だたせる力ある演出で定評のある宮田慶子を迎え、大浦と同世代の踊り手が結集、言葉と踊りのさらなる融合を模索する。振付は引き続き大浦の“盟友”前田清実が担当する。3人に前作から今回までの道のりなどを聞いた。
大浦みずき
おおうら みずき。女優、元宝塚歌劇団花組トップスター。
74年宝塚歌劇団入団。88年から主演。91年退団。以降、ミュージカル、タンゴリサイタル、ストレートプレイと幅広く出演。エッセイストとしても活躍。
退団後の主な舞台に「三文オペラ」「レ・ミゼラブル」「イーストウィックの魔女たち」「NEVER GONNA DANCE」「ナイン」「カルテット」「スィングボーイズ」ほか多数。第30回菊田一夫演劇賞受賞。第13回読売演劇大賞女優賞受賞。(写真中央)
宮田慶子
みやた けいこ。演出家。学習院大学中退後、青年座研究所を経て、80年青年座入団。現代劇作家の書き下ろし戯曲から翻訳劇まで幅広く手がける。
最近手がけた舞台に「元禄光琳模様」「忘れられない人」「朱雀家の滅亡」(07)、「帰り花」「元禄めおと合戦」(08)ほか多数。主な受賞歴に、第9回読売演劇大賞最優秀演出家賞、第29回紀伊國屋演劇賞個人賞、平成10年度芸術選奨文部大臣新人賞受賞、第43回毎日芸術賞千田是也賞。10年9月より新国立劇場演劇部門の芸術監督に就任予定。(写真左)
前田清実
まえだ きよみ。舞踊家・振付家。日本大学演劇学科卒業。ダンサーとして活躍する傍ら、振付家として数多くのミュージカルやストレートプレイ、宝塚歌劇団の作品を手がける。
同世代の踊り手が結集
―― 昨春のGIGEI-TENプロジェクト第1弾『コインランドリー』の手ごたえですが、振り返ってみていかがでしたか?
大浦みずき: やりたいと思っていたことがかなり出来たという達成感があります。第1歩としては二重丸・三重丸・花丸をあげたいですね。
と同時に、プロの方たちと踊ってみて、自分の踊りの未熟さも感じました。自分の使い切れない身体をもどかしく思いながら、でもとても面白くて。前田清実先生始め、プロの踊り手の方と組ませていただいて、いろいろな刺激を受けました。
前田清実: 私もやりきった感はありました。このプロジェクトでは自分で振り付けをして、しかも踊らなくてはいけない。自分の中に、作って踊るエネルギーがまだまだ残っていることを実感しました。
―― それなりに達成感はあったわけですね。そこから今回2作目を作るにあたってのモチベーションは?
大浦: 『1』が終わった瞬間、『こういうものをやりたい!出たい!』っていう人がたくさん現れて(笑)。そう言ってくださった方が私たちと同世代のダンサーで、長い間踊ってらっしゃる方は『コインランドリー』のような、踊りと芝居の融合をとても面白いと感じてくださったんではないかと思ったんです。そこでふと『今度は同世代でやりたい』って。それで第2作目は、ほぼ同世代の踊り手で固まっていったんです。
―― 大浦さんと前田先生のお2人のカンパニーの輪が広がった。
大浦: 私と同世代の、生きてきた場所は違うけれど、同じように年月を経てきた皆さんがやりたい、そう言ってくださったことは重みがあるし、自信にもなりました。
それにプロで踊ってきた方は同時にすごい役者だと思うんです。お芝居を踊りで表現することに長けた人たちなんではないかと。
そうして集まってくださった人たちと、それじゃあ具体的にどうしようとなったときに、場所と人間しか決まってなくて(笑)。『さて、じゃあ何をやるか』というところで。
―― 宮田慶子先生のところにお話がいったわけですね。
宮田慶子: 「何かやりたいんだけど」って(笑)。
前回の公演はあいにく見逃してしまったんですが、後でDVDで見て『面白いことやってるな』と思っていました。そこに声をかけていただいて、『仲間に入れて』って感じで。
お2人とは同世代だからこそ、これまでやってきたこと、なおかつこれからこだわりたいものへの熱い思いがよくわかりました。でも“思い”だけでは駄目で、人生や経験に裏打ちされたものだから具体化できる。そういうメンバーなので、その作業にご一緒させていただけるのはすごく楽しみです。
ところが、『こういうものがやりたい』『こういう考え方でやりたい』というのはすごくあるんだけど、『じゃあ何をやりたいの?』というと(笑)。
きっといろいろ欲張りすぎてね、あれもやりたい、これもやりたい、こんなことができたら、こういうのもやりたいんだけど…。じゃあそれが全部一緒に出来るとしたらどうすればいいんだろうという宿題をいただいて。
お互いが普段いろいろなプロデュース公演などの仕事をやっている中では出来なかったこと、または違うこと、そのあたりを狙って、ちょっと変わっているけどこんなのはどう?と提案させてもらったんです。
―― そのあたりを具体的に。「Lady x 7」の全体の構成は?
宮田: 閉館が決まった古い歴史ある劇場が舞台で、そこの最後のオーナーとなった女性が大浦さん。そこに他のメンバーがいろいろな形で絡んでくるんですが、この世の人間ばかりではありません。皆が皆、踊りに自分の人生をかけた女性ばかりです。
―― 登場人物と出演者がシンクロしているようですね?
宮田: そうです。出演者の皆も、何らかの情熱がないとこの年齢までやってこれないんじゃないか。それぞれの踊りに対する思いはかなり深いものがあるわけで、その思いをそのままいただいて、人物像やエピソードを作っていけたらと。
もちろんご本人そのままではありません。たとえば1つだけエピソードを紹介すると、昭和初期にレビューで踊っていた女性がいる。だけど時代も時代だし、踊りへの好奇心はあるけど、それでアメリカに行けるのか、あるいはアメリカに行ったところで外国人との体型や技術の違いはどうするのか。こうした1つ1つを克服したいという思いばかりが募る一方で、どんどん挫折ばかりが大きくなって。結局、踊りたい、あの世界に届きたいという思いを持ったまま、戦争が始まり、思い半ばで彼女は…。
そういう踊りに対する憧れ、夢、情熱を抱えていたんだけど、それにしがみついたまま命を終わってしまった女性たちの思い。そういうエピソードを1つ考えています。
というのも、普段、劇場という空間で仕事をしていて、やはり何かいるなって感じるんですね(笑)。怖いとかお化けがいるとか、そういうことではなく、先輩方のこの場にかけてきた思いが、空気となってあちこちに残っているのを感じていて、逆に身が引き締まる思いがするんです。そういう先輩たちへのオマージュも含め、その後を歩かせてもらっているということを表現するところまでいきつけたらいいなと。
―― 今回のようなお芝居とダンスの融合というコンセプトならではですね。ところで今伺ったお話はエピソードの1つで、7人の登場人物がこうしたエピソードをそれぞれ持っているわけですね。
宮田: そう、だからどこまで伝わるか、わかってもらえるか(笑)。うんうんうなりながらやっているところです。
―― これだけ深いエピソードが複数あって、それを1時間半ほどの舞台でやってしまう。
宮田: ただね、踊りの伝える力はすごい。これが芝居だったら2~3時間かかる(笑)。
―― それは振付とか、身体表現のすごさという意味で?
前田: そういうことではなくて、踊りはね、時空を超えられるんです。台詞だと、ああでこうでと説明していかなくてはいけないところを、1つ振りをすることで表現できてしまう。
でも同時に『台詞を超えられない』『音楽を超えられない』という思いもいつもあって。やはり言葉でガツンときたほうが感動もするし、音楽もそう。『なぜ踊りはそれを超えられないんだろう』というのが課題なんですね。だからこうした“ダンスドラマ”というものがすごく楽しいですね、台詞も踊りも音楽も一緒にできるので。
宮田: 逆に、芝居ばかりやっている私からすれば『踊りはすごい、音楽はすごい。悔しい』。きっとお互いがお互いのジャンルに対してそう思っていて、それぞれがかなわなかった経験を持ち寄って作っているんです。
サービス精神満点です
―― その踊りと芝居を表現するのが大浦さん。
宮田: 本当にうまく分担できていて、踊りは清実さん、芝居は私と、それぞれが持ち寄って、ぶつけあって、そこを大浦さんがちょうど中間地点をすーっと。
大浦: (笑)。今回は元になる台本が全然なかったので、一から言葉を作る作業がすごく楽しいですね。昨日は皆で台本作成していましたし。
断片的に踊りがあって、それを言葉の力を借りてつなげてみて、とりあえず通してやってみようと。そしたら『つながった!見えた!』って。何言ってるかわからないかもしれないけど(笑)。
前田: 自画自賛かもしれないんですが、ダンスのジャンルで言うと観たことがないです。よくダンスドラマと銘打ってやっているものもありますが、それとは全然違いますね。
―― 見たことのないジャンルですか。観客はどうやって楽しめば?
宮田: 言葉をとっかかりに、お客様自身がいろんな想像力を使いながら追いかけていく楽しみを味わっていただけると思います。
前田: コンテンポラリーのダンスって、どんなに優れた高名な海外から来たカンパニーのものでも、観ているとどこかでふっと眠くなってしまう。それはサービス精神がないからなんですね。
やっぱりお客様あっての我々じゃないですか?それが俺たちは関係ないよっていうのが主流になってきていますが、それは違うと思う。お客様に楽しんでいただくのが大事。そういう意味ではこの『Lady x 7』はバラエティに富んでいてサービス満点だと思います。
大浦: 踊っている自分たちはわかっていても、それを出し切れているか。すごく何か感じながらやっているんだろうということはわかるんだけど、それが何なのか、具体的なことがもうちょっとわかるともっと面白いのになってよく思いますね。
今、私はこういうことを言いたいのっていうことが観ている側に少しでもわかると、押し付けじゃなくてそれが伝わると、そこからもっと想像が膨らむと思うし。
前田: 表現者がちゃんと客席にアピールしてくれると、意味がまったくわからなくても私は「わかった」って思います。お客様が好きなように解釈する、それはOKなんです。そういう意味でのサービス精神は持ってなくてはいけないような気がして。
宮田: それはやはり、演者が自分を持っていることが必要で、自立した演者ばかりのこういうカンパニーだからこそできるんです。結局表現者として自立してないと、振付に頼ることになってしまって、振付を完璧にやっているという自己満足に陥るから、「じゃあお前は何をやりたいんだ」って言いたくなる(笑)。
―― 今回の演者の皆さんは表現したいことがまずあって、それを判りやすく伝えるということですね。
大浦: でもその表現したいところに、ちょっと今回枷があるというか(笑)。
―― 枷?
前田: それぞれ得意じゃないものとか、初めて挑戦するものとかをね(笑)。
―― そこが挑戦の部分なんですね。皆さんが得意の部分を発揮するのかと想像していたんですが。
前田: いやいや、そうじゃないんです。
宮田: 大変なハードルになっている(笑)。
―― 大浦さんとしてはどこがハードルですか?
大浦: 私は棒高跳び状態です(笑)。
宮田: 大浦さんは基本的に出っぱなし状態なんです。
大浦: 他の人が踊っているときでも、私は舞台上に、ただいるんです。
宮田: 普通のダンサーなら、ただそこにいるだけなんて出来ないですよ。
前田: いられない。いることがすごい。難しいですよ、ただ、そこにいてその人を見るなんて、本当に力がないと。
大浦: 踊っている人の力があるから見ていられるんです。
宮田: この舞台の底には必ずドラマが流れているんです。だからソロで踊っていても、観客に見せているのではなくて、舞台上にいる大浦さんとの会話なんです。基本的には大浦さんに見せている。
大浦: 芝居している感覚ですね。
前田: でもこれも数日前に「やっぱり舞台上にいることにしようか」って大浦さんが言い出して。そうしてみたら本当にめちゃくちゃいいんですよね、いなかったときより、双方がいいんですよ。
大浦: そのときは、自分ということではなくて、誰かが舞台にいたらいいんじゃないかなって思ったんですよね。誰かに語るようにというのがいいんじゃないかと。
宮田: 芝居屋からするとそれは当たり前。1人では喋らないもの。
前田: (笑)。お互い発見がある。
黄金の7人
―― タイトルについてお伺いしたいのですが、7人という数字は最初から?
大浦: こだわったわけではないんですけど。
宮田: メンバーと作品の方向性が決まって、作品の内容を示すタイトルがいいのかと考えたときに、それよりもこのメンバーをアピールしたいね、ということで。
―― 逆にタイトルから今回の舞台に影響を与えたことはありますか?
大浦: 1つありますね。タイトルに近い曲を(笑)。
全員: (笑)。
宮田: 「黄金の7人」という曲なんですけど(笑)、この曲で見せ場を作ろうと。
―― 音楽はどんなものを?
宮田: いろいろですね。メンバーにあわせて7通りの踊りをやりたいと思っていたので、基本的には踊りにあわせて、バリエーションに富んだ選曲になっています。
―― 踊りにも7人全員で踊ったり、ソロ、複数で、いろいろなバリエーションがあるんですね。
宮田: 全員のところが『黄金の7人』(笑)。
―― お稽古場の雰囲気は?
前田: 自分に厳しい方ばかりですから自主トレも積極的です。きっと皆さん怖いと思うんですよね、それぞれ持ち場が与えられているから、自分のパートでお客さんを離してはいけないし、それぞれ比較されやすい。
―― 期間もダンスの公演としては長いですね
大浦: 『1』のとき、観たかった、でも期間が短いから観られなかったという声が多くて、それで今回ダンスとしては長い期間を取りました。
―― 芝居も踊りも2作目でこれだけ究めてしまうと、「3」は一体どうするのかなと思いますが?
大浦: どうしたらいい?というのは実はすごく思っています。
宮田: 『2』をやってみないことにはわからないですね。実験だから失敗があっても当然だし、失敗がまたとっかかりになって次につながることになる。
―― 2をやってみて、3につながるものが発見できるということですね。最後にお伺いしますが、『1』のフィナーレにあった格好いい踊りは?
前田: (力強くうなづく。)
―― 期待しています(笑)。
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GIGEI-TEN II
Lady x 7(レディ バイ セブン)
脚本・構成・演出: 宮田慶子
出演: 大浦みずき、前田清実、福麻むつ美、神崎由布子、青木美保、鳴海由子、鈴木レイ子
期間: 2008年9月26日(金)~10月5日(日)
会場: 赤坂レッドシアター(⇒劇場のHP)
※公演の詳しい情報はジェイ・クリップ 03-3352-1616
投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ 2008/09/22 10:00:00 公演情報エトセトラ | Permalink | トラックバック (0)
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