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2008年9月12日 (金)

中本千晶のヅカ★ナビ!

《上級編》「ひとかけらの…寂しさ」

レベル:★★★(上級編)
分野:心理学
対象:マリッジブルーを経験したことがある人、幸せすぎる自分に一抹の不安を覚える人

現在、東京宝塚劇場で上演中の星組公演「スカーレット・ピンパーネル」、宝塚大劇場で先に観た知り合いが「100点満点!」と採点していたらしいけど、たしかに納得の面白さだ。

年間8本もの大劇場作品を上演するタカラヅカ。当然、作品ごとに評価は分かれる。新しい作品の初日が開けるたびに、ファンの声がかしましい。

そのなかで、多くのファンの高い評価を獲得する「名作」の条件とは何だ?
スカーレット・ピンパーネル」観劇をきっかけに、ふと考えてみた。

第一に、毎公演2000人もの観客の興味を最後まで惹きつけるストーリーであること。
そうなると難しすぎてはいけないが、かといって陳腐なものでもいけない。当然、明らかな破綻や矛盾があってもシラけてしまう。
このあたりの絶妙なバランスが難しい。

第二に、スターの魅力が生かされること。
タカラヅカの場合ここを見る目はとりわけ厳しい。主なキャストが適材適所であることに加えて、若手にも見せ場が与えられることをファンは期待するのだ。

第三に、芝居に加えて歌やダンスに見所があり、かつ、歌い手、踊り手も優れていること。
これまたファンの目は肥えてきているから、求められるレベルもどんどん上がっている。

スカーレット・ピンパーネル」はこの3条件を見事にクリアしているのだ。
この作品は、イギリスの小説「紅はこべ」が原作だ。フランス革命直後、ギロチンの恐怖にさらされるフランス貴族たちを救出する秘密結社、「紅はこべ(英語でSCARLET PIMPERNEL)」のリーダー、パーシーと、「紅はこべ」を追うフランスの公安委員ショーヴランの対決、そしてパーシーの妻でフランスの元人気女優マルグリットを巡る恋物語が描かれる。

小説をもとに、1997年にブロードウェイでミュージカル化。これが宝塚バージョンとして日本で初上演された。演出は「エリザベート」などこれまで数々の海外ミュージカルの日本導入を手がけてきた小池修一郎である。

原作の小説「紅はこべ」をかつて愛読した人も多いと思うけど、加えて舞台では新たな設定も加えられ、3人の愛憎がさらに面白く描かれる。
難題をつぎつぎと解決し、最後はハッピーエンドに終わる展開もタカラヅカにぴったり。

それぞれに二つの顔を持つパーシーとマルグリット、大人の男女の愛憎をベテラン実力派の安蘭けい遠野あすかが魅せる。対するショーヴラン役は若手ホープの柚希礼音が熱演。「レ・ミゼラブル」のジャベールを彷彿とさせる敵役だ。

加えてこの作品がオイシイのは、パーシーを囲む「ピンパーネル団」メンバーに、星組期待の若手スターが集められていること。
ピンパーネル団が活躍する場面が来るたびに、ファンはワクワク、オペラグラス片手に若手チェックにいそしむことになる。

フランク・ワイルドホーン氏作曲の歌も良い。劇団屈指の歌い手である安蘭けい遠野あすかのソロが素晴らしかったのはいうまでもないが、これまでは「ダンスの人」の印象が強かった柚希礼音のがんばりもいい。迫力あるアンサンブルも聴き応え十分だ。

非の打ちどころのない「スカーレット・ピンパーネル」なのだが、それでもなお、一抹の寂しさが残るのは何故? やっぱり秋だから?

それはきっと、「突っ込むスキ」があまりにもなさすぎるからだと思う。

もし、年間8本の作品すべてが「スカーレット・ピンパーネル」並みの100点満点だったら、劇場は常に大入り、劇団も潤ってウハウハだろう。
ファンも大満足しつつ、それでも、ひとかけらの寂しさを覚えるのかもしれない。

個人的には、「いかにもタカラヅカ」な荒唐無稽なラブストーリーや、斬新すぎてちょっとついていけない作品など、ツッコミ所満載な作品も5本に1本ぐらいは混ぜておいて欲しいなと思ってしまう。
観劇の後お茶しながらの「ツッコミ会議」も楽しみのひとつなんだし。

完璧じゃないこと、玉石混交であることもタカラヅカの魅力だと思うから。そして、それが飽きられず長く続く秘訣でもあるとも思う。
ま、そのためにはまず「玉石」の「玉」がないとダメなんですけどね。(中本千晶

☆ステップアップのための宿題☆
原作は、創元推理文庫「紅はこべ」集英社文庫「新訳 スカーレット・ピンパーネル」で読むことができます。子ども向けの本もありますから、親子で読書&観劇を楽しむこともできますよ。

投稿者 ベルばらKidsぷらざスタッフ  2008/09/12 11:00:00 中本千晶のヅカ★ナビ! | | トラックバック (0)

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